研究課題/領域番号 |
26460063
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
今中 常雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (50119559)
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研究分担者 |
川口 甲介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (80624866)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ABCトランスポーター / ペルオキシソーム / リソソーム / オルガネラ局在化機構 / 極長鎖脂肪酸CoA輸送 / ビタミンB12輸送 / 副腎白質ジストロフィー / ビタミンB12欠乏症 |
研究実績の概要 |
ABCタンパク質サブファミリーDに属するABCD1-4に関して、ペルオキシソームに局在するABCD1-3の基質輸送機構ならびにABCD4のリソソーム局在化機構を解析し、以下に示す成果を得た。 1.ABCD1のacyl-CoA thioesterase 活性の活性中心を明らかにするため、transmembrane domain (TMD)のSer残基をAla置換した9種の変異型ABCD1をP. pastoris に発現させた。変異型ABCD1(S149A)に顕著な活性低下が見られた。S149に変異をもつ副腎白質ジストロフィー患者が存在することより、S149が活性中心である可能性が示唆された。さらに、ABCD1のWalker A motifに変異を入れATPase活性を消失させた変異型ABCD1(K513R)を作製した。本変異型ABCD1はacyl-CoA thioesterase活性を保持していた。野生型、変異型ABCD1(S149A)ならびにABCD1(K513R)を発現させたペルオキシソーム膜小胞を作製し、ABCD1の脂肪酸CoA輸送機構におけるacyl-CoA thioesterase 活性とATPase活性の役割について詳細な解析が可能になった。 2.ヒトABCD2ならびにABCD3遺伝子を改変することにより、それぞれP. pastorisで発現させることに発現に成功した。ABCD1-3間の基質輸送の多様性の解析が可能になった。 3.HEK293細胞用いCRISPR/Cas9システムでLMBD1をコードする遺伝子LMBRD1をノックアウトした細胞を作製した。LMBRD1をノックアウトすると、小胞体からリソソームに局在化するABCD4が顕著に減少していた。よって、内在性ABCD4のリソソームへの移行もLMBD1に制御されていることが示唆された。さらに、ヒトABCD4をP. pastorisに発現させ、可溶化後プロテオリポソームの作製も可能になった。ビタミンB12を定量するための新たな蛍光プローブも作製した。 4.ヒトLMBD1もP. pastorisでの発現が可能になった。ABCD4単独ならびにABCD4とLMBD1を共発現させることにより、ABCD4のビタミンB12輸送機構とLMBD1の役割の解明が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ヒトABCD1を酵母P. pastorisに発現させ、ABCD1の特性を明らかにするとともにABCD1を介した極長鎖脂肪酸輸送の解析が進んだ。さらにヒトABCD2とABCD3のP. pastorisへの発現に成功したので、ABCD1-3間での基質輸送の多様性を検討することが可能になった。 2.CRISPR/Cas9システムでLMBD1をノックアウトした細胞を作製することにより、内在性ABCD4も小胞体上でLMBD1と複合体を形成し、リソソームへ移行することが示唆された。また、ABCD4とLMBD1をP. pastorisに発現させることができた。よって、LMBD1を介したABCD4のリソソーム(酵母の場合は液胞)への輸送機構の詳細な解析が可能になった。また、ABCD4を用いたプロテオリポソームの作製も可能になり、ABCD4を介したビタミンB12輸送機構とLMBD1の役割についても解析が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26、27年度の進展状況を踏まえ、以下の2項目を中心に解析を行う。 1.ABCD1-3の極長鎖脂肪酸CoA輸送機構の解析 野生型ならび変異型ABCD1-3を発現したペルオキシソーム膜小胞を用い、長鎖脂肪酸CoA輸送の多様性の詳細を解析する。また、プロテオリポソーム作製を作製し、詳細な基質輸送機構を解析する。 2.ABCD4のリソソーム局在化機構とビタミンB12輸送機構の解析 ABCD4のリソソーム局在化機構に関しては、ABCD4とLMBD1が相互作用する領域を同定する。ビタミンB12輸送機構に関しては、ABCD4ならびにABCD4とLMBD1を共発現させたP. pastorisより膜小胞を調製し、ビタミンB12輸送機構を解析する。さらにプロテオリポソームを作製し、より詳細な解析を行なう。LMBD1のビタミンB12輸送における役割についても解析する。
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