研究課題/領域番号 |
26460064
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田渕 明子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40303234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子発現 / 脳由来神経栄養因子 / 血清応答因子 / 転写コファクター / Arc |
研究実績の概要 |
神経活動により一連の遺伝子発現が活性化する。その中でも神経系最初期遺伝子に属するactivity-regulated cytoskeleton-associated protein (Arc) 遺伝子は、神経活動や脳由来神経栄養因子(BDNF)により発現が誘導される。前年度には、BDNFによるArc遺伝子発現誘導がMKL2のRNA干渉により抑制されることを報告した。本年度は、クロマチン免疫沈降法により、MKL1およびMKL2がArc遺伝子プロモーターに結合しているかどうかを検証した。その結果、MKL1とMKL2が結合している可能性を示唆する予備的結果を得たが、再現よく結果が得られるかどうか検証しているところである。 また、我々が新たに同定したMKL2アイソフォームSOLOISTがArc遺伝子発現誘導を起こすかどうかについて検証を行った。ホタルルシフェラーゼをレポーター遺伝子として調べた結果、MKL2アイソフォーム1, 3, SOLOISTは、Arc遺伝子プロモーター活性化を引き起こしたが、内在性Arc遺伝子活性化能についてはSOLOISTが最も高いことが明らかとなった。したがって、SOLOISTがArc遺伝子のクロマチン制御をコントロールする可能性が考えられた。 さらに、 キメラマウスの作製まで進行していたSOLOISTノックアウトマウスは、germline transmissionの確認をしているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.SRFコファクターの切替えによるArc遺伝子転写の分子機構、2.Arc mRNA発現とArc遺伝子プロモーター上のSRF転写因子複合体構成変化の追跡 前年度にArc遺伝子活性化におけるMKL2の関与を示すことができたが、MKL2が内在性Arc遺伝子プロモーターに結合するかどうかを検証するクロマチン免疫沈降法の条件検討が難航した。現在も再現性をとる試みを行っているところである。一方でSOLOISTが高い内在性Arc遺伝子活性化能を有していることが明らかになった。これは、MKL2アイソフォームが異なった機能を有しており、特にSOLOISTがクロマチン制御による遺伝子発現に積極的に関わっていることを示唆している。この点では、研究が進展している、今後の発展が期待される。 3.SOLOISTコンディショナノックアウトマウスの作製 前年度には、キメラマウスの作製に成功したが、Germline transmissionが未だに確認できていない。Germline transmissionが確認されないと、ヘテロマウスやノックアウトマウスの作製が困難であるため、実験が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルにおけるArc遺伝子発現制御機構を当面の目標としてきたが、クロマチン免疫沈降法によるMKL1, MKL2の関与を再現よく明らかにすることを最優先に推進されるべき事項となる。これを達成した後には論文作成に取り組みたい。 SOLOISTが高い内在性Arc遺伝子活性化能を有していることをふまえ、この研究をエピジェネティクス制御の観点から発展させたい。例えば、SOLOISTによりArc遺伝子転写開始点近傍のヒストンアセチル化状態やRNAポリメラーゼIIのリクルートの効率化が起きているかどうかを検証することも可能であると考えている。 SOLOISTコンディショナノックアウトマウスの作製が難航していることをふまえ、人工授精によりGermline transmissionの確認を行うことを予定している。また、目的としているのは、SOLOIST特異的なエキソン欠失であるため、ゲノム編集による欠失変異マウスの作製を行う等、別角度からの検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
配属された学生数の減少等により年度末の消費がいくぶん減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、消耗品費を中心に使用することを計画している。
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