研究課題
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、胆汁の分泌がうまくできずに肝臓の細胞内に蓄積し、その結果として黄疸や強い掻痒感をきたす遺伝性の疾患である。PFICの原因遺伝子は3つあることが既に明らかとなっており、I型がATP8B1、II型がABCB11、III型がABCB4、と変異遺伝子により分類されている。このうちABCB11は胆汁酸のトランスポーターとして、ABCB4はホスファチジルコリン(PC)を脂質二重層の内葉から外葉にフロップするfloppaseとして各々機能しており、胆汁酸の排出と密接に関わることが示されている。P4-ATPase(flippase)であるATP8B1は、これまでホスファチジルセリンのflippaseと考えられてきたが、この定説を覆し、ホスファチジルコリンを特異的な基質とすることを新たに見出した。遺伝病由来の様々な点変異の変異体を用いて安定発現細胞株を樹立した結果、多くの変異体は正常に発現せず、プロテアソーム経路で分解されることが分かった。一方、いくつかの変異体は野生型と同様に発現し、細胞膜に正常に輸送されることを確認した。これらの変異体のflippase活性を測定した結果、ホスファチジルコリンに対するflip活性がほとんどなくなっていることを発見した。したがって、本研究によりPFIC発症の原因の一つがホスファチジルコリンflippaseの活性の欠損であることを初めて報告した。また、もう一つのPFICの原因遺伝子産物であるホスファチジルコリンのfloppaseのABCB4との関連を調べた結果、ホスファチジルコリンのFlip-FlopはATP8B1とABCB4によって行われていることを示した。したがって、胆汁酸の正常な分泌のためには毛細胆管膜においてATP8B1とABCB4のホスファチジルコリンの輸送の調節が不可欠であることを明らかにした。
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