研究課題/領域番号 |
26460066
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井上 浄 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 准教授 (00433714)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 免疫老化 / 自己免疫疾患 / がん / 胚中心 |
研究実績の概要 |
免疫老化は様々な疾患を引き起こす原因となっていることが知られているが、その実体は分かっていない。我々研究グループは加齢とともに増加する老化関連T細胞(SA-T)を発見・同定し、報告してきた。本研究では、平成26年度に引き続き、SA-Tが高発現する因子のKOマウス、Tgマウスを作製することで、SA-Tの特徴を個体レベル・細胞レベル・分子レベルで明らかにし、免疫老化への関与を明確にすることを目的とする。平成27年度は以下の検討を行い新たな事実を明らかにした。 【老齢マウス、自己免疫疾患や糖尿病、がんのモデルマウスにおけるSA-Tの増加と自己反応性胚中心の形成、および病態の変化の解析】 平成26年度の研究では、老齢マウス、自己免疫疾患モデルマウスならびに糖尿病モデルマウスを用いて解析を行ってきた。平成27年度は、メチルコラントレンを用いたがんモデルマウスの解析を進めたところ、2次リンパ組織におけるSA-Tの増加は、メチルコラントレンを投与しない対象群と比較し、大きな変化は認められなかった。またがん局所における解析からも、SA-Tの増加は認められなかった。しかし大変興味深いことに、がん局所における解析からSA-Tとは異なる分子を発現するTfh様細胞の増加が認められ、今後この細胞の解析も進めていきたいと考えている。 【SA-Tが発現・産生する転写因子や向炎症性因子の遺伝子破壊マウスおよびトランスジェニックマウスの作製と解析、およびTfhの分化・増殖に必須の因子を欠損したマウスでの解析】 SA-Tに特徴的な遺伝子を改変したマウスの作製を進めた。また、SA-TとTfhに共通する遺伝子を改変したマウスの作製と解析を進める中で、平成26年度に、B細胞を欠損するマウスでは老齢個体であるにも関わらずSA-Tがほとんど存在しないことを明らかとしており、その詳細なメカニズムについて解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」は、計画していた各項目において、おおむね順調に結果を得ている。モデルマウスを用いた実験で順調に解析が進み、また遺伝改変マウスの作製も順調に進んでおり、今後は遺伝改変マウスの解析に注力して研究を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度および27年度の成果を踏まえ、種々の遺伝子改変マウスの解析を行うことで、SA-Tの特徴を個体レベル・細胞レベル・分子レベルで明らかにし、免疫老化への関与を明確にする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付申請書に記載した「研究の目的」は、計画していた各項目において、おおむね順調に進んでいるが、所属研究機関の異動があり、新しい所属研究機関への異動やラボのセットアップ等で時間がかかってしまった。 この異動に伴い、実験スケジュールが変更になったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、主に作製したマウスの解析が中心となる。平成27年度からの未使用の研究費は、予定通り遺伝子改変マウスの作製および解析に使用する。 本研究成果の学会発表や研究会への参加により、より多くの知見等を収集し本研究の推進に役立てるため、旅費を見積もっている。また、本研究を論文発表するための費用としても使用する計画である。
|