研究課題
小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は分泌小胞内へのATPの充填装置であり、プリン作動性化学伝達の必須因子である。本研究課題は、VNUTノックアウトマウスとVNUTに特異性の高い阻害剤を用いて、神経・内分泌系におけるATPの分泌機構とその生理的意義を解明し、プリン作動性化学伝達の全体像を理解することを目的とする。これまでに、(1)VNUTノックアウトマウスは、分泌小胞内へのATP輸送が完全に消失していること、(2)海馬神経細胞、副腎クロマフィン細胞、膵臓β細胞からのATP放出が消失していること、(2)ATP放出のがなくなることによって、海馬神経細胞からのグルタミン酸放出と副腎クロマフィン細胞からのカテコールアミン放出が低下し、膵臓β細胞からのインスリン分泌が上昇すること、(3)VNUTノックアウトマウスは、外見上の変化はなかったが、低血糖症状を示し、インスリン感受性が向上することを見いだした。以上の結果から、神経・内分泌細胞において、VNUTはATPの小胞内濃縮とその放出に必須であり、このATPはグルタミン酸、アドレナリン、インスリン分泌の調節因子として機能していることを明らかにした。さらに、VNUTは血糖制御に重要な役割を担っているため、この阻害剤は新規糖尿病薬として期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究計画での研究対象である海馬、副腎、膵臓でのVNUTの生理的意義を明らかにし、論文報告した。これに加え、血小板でのVNUTの生理的意義も明らかにし、別の論文として報告した。以上より、当初の計画以上に研究は進展していると判断した。
これまでにVNUTノックアウトマウスを用いて、神経・内分泌系におけるATPの分泌機構とその生理的意義を明らかにした。今後は、VNUTの特異的阻害剤を用いて、神経・内分泌系におけるVNUTの生理的意義、及び、新規治療薬としての可能性について検討したい。
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