研究課題/領域番号 |
26460068
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
西屋 禎 奥羽大学, 薬学部, 教授 (80399831)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | SPSB / iNOS / CDC14A / FOG-2 / CTTNBP2 / Nrf3 / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
新規E3ユビキチンリガーゼECS(SPSB)の生理的役割を明らかにするために,ECS(SPSB)の機能を可逆的に抑制することができる細胞株の樹立を行った.具体的には,iNOSやCDC14AといったECS(SPSB1,2,4)の基質を発現するヒト肺胞基底上皮細胞株のA549細胞に,ECS(SPSB1,2,4)の機能を特異的に抑制することが分かっているiNOSのN末1~124アミノ酸部分(以下,ECS(SPSB1,2,4)インヒビター)を,Tet-OFFシステムを用いて可逆的に発現させることを試みた.第一段階として,pRevTet-OFFベクターをA549細胞に導入し,得られたA549-TetOFF細胞に,第2段階としてpRevTRE-hiNOS(1-124)-FLAGベクターを導入した.こうして得られたA549-TetOFF-hiNOS(1-124)-FLAG細胞は,その培養液からドキシサイクリンを除去すると,12時間以内にECS(SPSB1,2,4)インヒビターの発現が誘導され,そこにドキシサイクリンを加えると,その発現が停止することを確認した.さらに,iNOSおよびCDC14Aの寿命がECS(SPSB1,2,4)インヒビターの発現によって著しく延長されることや,細胞増殖の抑制が起こることを見出した. また,今年度は,4種類存在するSPSBファミリー分子の中で,一次構造や生化学的性質が他のメンバーと著しく異なり,かつ基質が同定されていないSPSB3について,酵母ツーハイブリッド法を用いた網羅的な基質探索を行い,SPSB3に特異的に結合する蛋白質としてNrf3を同定した.さらに,ECS(SPSB3)はNrf3をユビキチン化するが,その分解は誘導しないことを見出した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,iNOSやCDC14AといったECS(SPSB1,2,4)の基質を発現するA549細胞に,ECS(SPSB1,2,4)インヒビターを発現させるためのTet-OFFシステムを導入することにより,ECS(SPSB1,2,4)の機能を可逆的に抑制することができるA549細胞株を作出することに成功した.さらに,この細胞においてECS(SPSB1,2,4)の機能抑制が,iNOSやCDC14Aの分解を著しく延長することや,A549細胞の増殖を抑制することを明らかにした.また,酵母ツーハイブリッド法による網羅的スクリーニングにより,SPSB3の基質を世界で初めて同定することができた.このことから,本研究計画は概ね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
ECS(SPSB1,2,4)の基質であるFOG-2やCTTNBP2を発現する細胞株(例,MDA-MB-231細胞,SH-SY5Y細胞など)においても,ECS(SPSB1,2,4)インヒビターを可逆的に発現することができるシステムを導入し,ECS(SPSB1,2,4)の基質の分解異常に起因する様々な異常を見出す.さらに,個体レベルでのECS(SPSB1,2,4)の生理的意義を明らかにするために,培養細胞系での実績を基に,ECS(SPSB1,2,4)インヒビターを可逆的にマウスに発現させるためのTetシステムのベクター系の構築を行う.また,ECS(SPSB3)によるNrf3の機能制御を明らかにするために,Nrf3の転写調節機能に対するNrf3のユビキチン化の影響を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった生化学実験試薬を用いる実験が延期になり,その試薬を購入しなかったため.
|
次年度使用額の使用計画 |
延期になっていた実験を行う目途がついたので,次年度使用額をその実験に必要な試薬の購入に当てる予定である.
|