研究課題
透過性遷移はミトコンドリアが持つ細胞死実行を決定するマシナリーである。本研究はオミクス解析を利用して、透過性遷移の誘導機構を解明することを目指す。平成26年度にカルシウムイオノフォアを使って、酵母細胞内のミトコンドリアに透過性遷移を誘起させる培養条件を決定できた。この培養条件を用いて、平成27年度は、メチルスルホン酸エチル(EMS)を酵母に添加することによって、酵母のゲノムに無作為に変異を導入し、透過性遷移が抑制される復帰変異株を単離することを試みた。効率的に復帰変異株を単離するためには、EMSを至適濃度で酵母に添加する必要がある。検討の結果、復帰変異株のコロニーを得るEMS濃度を決定し、複数の復帰変異株コロニーを得ることができた。得られた変異株をいくつか選択して培養し、ミトコンドリアを単離して実際に透過性遷移が抑制されているかをWestern blottingにより調べた。しかしながら、解析した複数のコロニーについてはすべて透過性遷移の抑制は認められなかった。この結果は、今回得られた復帰変異株は、透過性遷移の制御とは無関係な遺伝子への変異導入の結果、生育が回復した擬陽性株であることを示している。現在、さらに多くのコロニーについて検討を行い、ミトコンドリア透過性遷移が抑制されている変異株を探索するとともに、実験をハイスループットに進めるために、より簡便に透過性遷移が抑制されているかどうかを判断できる新しい方法論を検討している。また、擬陽性コロニーを減らす工夫についても検討をはじめている。
3: やや遅れている
目的とする透過性遷移が抑制された復帰変異株を獲得することができなかった。これは、当初の予測に反して、無作為変異の導入によって目的以外の遺伝子の変異による擬陽性コロニーが現れやすかったためである。このため、多くのコロニーについて検討を行う必要が生じた。
目的とする透過性遷移が抑制された復帰変異株を効率よく獲得するため、現在、検討をハイスループットに進めるためのより簡便な透過性遷移の評価方法を検討している。また、擬陽性コロニーを減らす工夫についても検討を行っている。透過性遷移が抑制された復帰変異株の獲得後は、速やかにオミクス解析を実施し、透過性遷移の制御因子の同定を目指す。
目的とする復帰変異株の獲得に向けた実験の進捗状況の関係で、平成27年度に行う予定だった一部の実験が、次年度(平成28年度)に持ち越しになったため、次年度使用額が生じた。
大きな実験計画の変更は必要ないため、目的とする復帰変異株が獲得でき次第、平成27年度に生じた次年度使用額を使って、続く実験を行なう予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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