研究課題/領域番号 |
26460070
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (60453057)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | EC-SOD / 細胞内銅イオン / Atox-1 / ATP7A |
研究実績の概要 |
本研究では、酸化ストレス防御酵素の一種であるsuperoxide dismutase (SOD) のエピジェネティクス制御機構としての細胞内銅イオン動態の意義の解明を最終目標とする。そこで、平成26年度ではin vitro実験系を用いて、ホルボールエステル (TPA) 処理したヒト単球系細胞株 (THP-1細胞) におけるextracellular-SOD (EC-SOD) 発現ならびに細胞内銅輸送タンパク (Atox-1、ATP7A、CTR1) の発現量をRT-PCR法およびウエスタンブロッティング法により解析した。THP-1細胞をTPAで処理した結果、EC-SOD mRNA発現の有意な増大が認められた。また、銅輸送タンパクのうち、ATP7A発現の増大も認められた。ATP7Aは細胞内の過剰な銅イオンを細胞外へと排泄する機能を有するため、TPA処理により細胞内銅イオン動態が変化している可能性が示唆された。そこで、細胞外の銅イオンキレーターであるBCSを用いて、EC-SOD発現誘導に対する銅イオンの影響を検討した。THP-1細胞をBCSで前処理した結果、EC-SOD発現誘導は有意に抑制された。THP-1細胞をTPAで処理したところ、一過性にAtox-1タンパクの核移行の亢進が認められた。また、その核移行はBCSの前処理により抑制された。そこで、Atox-1を過剰発現するプラスミドを作成し、TPA誘導性EC-SOD発現誘導に対するAtox-1の関与をさらに検討した。Atox-1プラスミドをTHP-1細胞に過剰発現させたところ、EC-SODの発現増大のさらなる亢進が認められた。以上の結果より、TPA処理したTHP-1細胞において細胞内銅イオン動態が変化し、銅イオン依存的にAtox-1が転写因子として機能し、直接的にEC-SOD発現を制御していると考えられた。平成26年度の研究成果により、in vitro実験系の実験方法・実験条件の確立するとともに、ターゲット遺伝子であるEC-SOD発現調節機構を解明する上で重要な知見を得ることが出来たと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、in vitro実験系の実験方法・実験条件の確立とともに、本研究のターゲット遺伝子であるEC-SOD発現制御機構の一部である細胞内銅イオンの関与を解明することが出来た。また、TPA誘導性のAtox-1の核移行ならびにATP7Aタンパク発現増大におけるPKC、MEK/ERK経路の関与を確認出来たため、来年度移行の検討にもスムーズに取り掛かることが出来るものと考える。しかし一方で、Atox-1タンパクのglutathionylationの検討も行ったが、免疫沈降の方法ならびにその検出方法には改良が必要であると考えられた。以上より、一部予定通りの研究を遂行することは出来なかったが、来年度移行の研究を遂行する上で基礎となる実験系の確立、改良すべき点といった課題を得ることが出来たため、現在まではおおむね順調に当初の予定通りに研究を遂行出来ていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究成果より、前年度同様にSODのエピジェネティクス制御機構としての細胞内銅イオン動態の意義の解明を最終目標とする。そこで、平成27年度では前年度の課題であるAtox-1のglutathionylationの検出を第一の検討項目とする。他の実験系にて免疫沈降法の確立が出来たため、本プロトコールを用いて検討を行う。また、前年度の研究成果より、EC-SOD発現制御機構におけるAtox-1の直接的な関与が認められたため、luciferase assayを用いて、その影響を詳細に解析する。さらに、クロマチン免疫沈降法 (ChIP法) においてはすでに実験系を確立しているため、EC-SODプロモーターにおけるAtox-1の相互作用を解析する。上記の直接的な相互作用が確認出来た場合には、エピジェネティクス制御における細胞内銅イオン動態の関与を検討する。具体的には、BCSあるいは銅イオンを細胞に負荷した際のヒストンアセチル化レベルやDNAメチル化レベルに対する銅イオンの関与を検討し、来年度に向けた実験基盤の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度では、in vitro実験の確立を目指して研究を遂行したが、一部当初予定通りの結果を得ることが出来なかったものの、大部分の研究は予定通りに遂行することが出来た。また、平成26年度に新たに岐阜薬科大学の学内研究費を得ることが出来たため、当初使用予定の一部を次年度へ繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究計画では、EC-SOD発現とAtox-1タンパクとの直接的な相互作用を解析する。そこで、本基金は直接的な相互作用を解析する上で必要となる多量の抗体ならびに免疫沈降用のビーズを購入するために使用する。また、ChIP法ならびにRT-PCR法に必要となる酵素の購入に使用する。
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