研究課題
我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有する p300 と GATA 転写因子群の協力(p300/GATA経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した。次に、p300/GATA経路の活性制御機構解明の為に、その結合タンパクを精製し、質量分析により網羅的に解析し73個同定した。本研究では、新規結合タンパクの中で、(1)p300/GATA4と直接結合し、(2)p300/GATA4による心肥大反応を変化させる、クロマチン修飾因子・転写制御因子である、(A)PRMT5/MEP50複合体、(B)SWI/SNF 複合体、(C)NuRD複合体、(D)N-CoR/SMRT複合体に着目し、p300/GATA経路制御機構の詳細な解明を行った。PRMT5/MEP50複合体は、①p300を非対称的にジメチル化する、②p300によるGATA4のアセチル化を抑制する、③p300/GATA4によって相乗的に誘導される心肥大因子の転写反応を抑制する、④心筋細胞において、心肥大促進因子であるフェニレフリンによって誘導される心肥大因子の転写反応及び心筋細胞肥大を抑制した。次に、SWI/SNF 複合体に含まれるIni1/hSNF5やNuRD複合体に含まれるRbAp48/46を過剰発現させると、p300/GATA4による肥大反応を抑制することを見出した。さらに、N-CoR/SMRT複合体に含まれるTBL1を過剰発現させると、HDAC をp300/GATA4にリクルートすることにより肥大反応を抑制することを見出した。さらなる詳細なメカニズムを解明することにより、p300/GATA4経路を制御する新規心不全治療薬のターゲットとなる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画が妥当であったため、実験は順調に進んでいると考えられる。
p300/GATA経路の活性制御機構解明の為に、その結合タンパクのトランスジェニックマウス及びノックアウトマウスを作成し、心不全発症メカニズムの検討を行うとともに、心筋梗塞ラット、高血圧性心疾患ラットを用いてp300/GATA4とその結合タンパクの結合能の変化解析を行う。
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J Pharmacol Sci
巻: 126 ページ: 329-336
10.1254/jphs.14151FP
臨床心不全のいちばん大事なところ60
巻: 1 ページ: 14-18