研究課題/領域番号 |
26460075
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 教授 (50255361)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | フェロトーシス / ビタミンE / shRNAライブラリー / PHGPx / 脂質酸化 / GPx4 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにリン脂質の酸化体であるリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)を様々な組織や細胞で欠損させると、カスパーゼ非依存性の脂質酸化依存的な新規細胞死を誘導することを明らかにしてきた。抗がん剤によるエラスチンによる変異RAS依存的がん細胞死を殺すメカニズムがグルタチオン低下に伴う鉄依存性の脂質酸化を介した新規細胞死であり、フェロトーシスと名付けられたが、同様の抗がん剤のひとつがPHGPxを直接阻害することがわかり、PHGPx欠損による細胞死もフェロトーシス様の細胞死であることが明らかになりつつある。しかし、その新規細胞死の実行因子、シグナル経路はほとんど明らかになっていない。申請者はタモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株を用いて、網羅的shRNAライブラリーをスクリーニングすることにより、PHGPx欠損による新規細胞死を抑制できるshRNAを44遺伝子程度見出している。本年度は、これらの細胞死実行因子(Fer遺伝子)のcDNAのクローニングを試み、さらに細胞死を抑制できるshRNA感染ノックダウン細胞に再導入実験を行うことにより、タモキシフェン添加によるPHGPx欠損細胞死が回復できるのかを検討した。その結果新たに2遺伝子を含む6遺伝子を同定するとともに、再導入するだけで致死を誘導する4遺伝子も見出した。このうち2遺伝子に関しては機能未知の新規遺伝子であった。新規遺伝子のひとつに関しては欠損変異体を作成して細胞死の制御に関与する領域の絞り込みを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初21遺伝子の予定であったが、さらなるスクリーニングの結果から細胞死実行因子の候補として44遺伝子のshRNAを同定した。このshRNAのターゲット遺伝子のcDNAのクリーニングを行い、発現の確認の得られたものに関しては、ノックダウン細胞への再導入実験による細胞死の回復実験を行い、6遺伝子を確定できた。その結果、まずは再導入実験系の構築に成功した。さらにこの系を用いて新規タンパク質の全長mRNAの決定および、C末端側の欠損変異体を作成して細胞死の制御に関わりそうな領域の絞り込みに成功したことから、この点では当初の計画以上に進んでいる。細胞死の抑制部位の検討は現在進行中である。またノックダウン細胞を用いていろいろな細胞死に対する抑制効果についても検討できつつあり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。これまで見出してきた遺伝子群はこれまでの既知の細胞死のものとは異なることからPHGPx欠損細胞死は新規の細胞死であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、当初の計画通り、新規細胞死実行因子の細胞死抑制部位の検討(脂質酸化の上流および下流等)また細胞内の局在変化等について解析することを目標に解析を試みる。44遺伝子の再導入実験についても順次すすめ細胞死実行因子のさらなる同定を行う。計画は順調に進んでいるので当初の目的、方法に基づき着実に成果をあげるとともに、得られた遺伝子間の関連性やシグナルの上下関係についても解析を試みたいと考えている。さらにPHGPx欠損細胞死とエラスチンによるフェロトーシスが共通経路を介するのか、違う経路であるのかを明らかにしたい。
|