研究課題
本年度は、網羅的shRNAのスクリーニングにより明らかにしたGPx4欠損細胞死の実行遺伝子(ノックダウンにより細胞死が抑制できた遺伝子群)44遺伝子のうち、昨年度得られたcDNAがクローニングできた19遺伝子について,機能や発現部位が報告されていないものがほとんどであったため、脂質酸化依存的新規細胞死(タモキシフェン添加)の際に細胞内の分布が変化するような遺伝子はないか、また脂質酸化あるいはその代謝に関連しそうな膜画分に分布する遺伝子が存在しないかについて主に検討を行った。まず19遺伝子すべてについて、GFPのN末端およびC末端にそれぞれのタンパク質を融合させたコンストラクトを作成し、タモキシフェン誘導型GPx4欠損MEF細胞にリポフェクトアミンを用いて導入し、タモキシフェンを添加した0時間から24時間ごとに72時間までオールインワン顕微鏡で観察した。この19遺伝子には再構成実験で再現性があり細胞死実行因子として確定させた6遺伝子もすべて含まれる。このうち、タモキシフェン添加前の細胞内での発現分布を調べたところ,2つの遺伝子が細胞膜、細胞膜あるいは小胞体に存在する遺伝子であり、1つの遺伝子は、核および核小体に存在していた。このうち再構成で確定した細胞死実行遺伝子の一つが細胞膜蛋白質であったことは興味深い。そのほかの16遺伝子については、すべて細胞質全体が染まっており、細胞質に存在するタンパク質であることが示唆された。次にタモキシフェン添加24時間後、48時間後、72時間後のGFP蛍光像の観察により細胞内分布の変化が起きるか調べたが、残念ながら19タンパク質は脂質酸化に応じて移動が観察されたタンパク質はなかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、昨年度のノックダウンによる解析から明らかにしたGPx4欠損細胞死実行遺伝子のcDNAのクローニングをすすめ、再導入で実行因子として確定できた6個を含む19遺伝子について、GFP融合タンパク質をすべて作成し、そのタンパク質の細胞内分布を明らかにすると共に、細胞死の過程で脂質酸化に応じて細胞内の分布を変化させる遺伝子があるのかについてまで解析できた。残念なことに細胞内の分布を移動させるタンパク質は見つからなかったが、細胞膜や核内に存在する遺伝子が3つあり、そのうち一つは既に脂質酸化依存的細胞死実行因子として確定できた遺伝子であった点は大きな成果である。
最終年度は本実験をまとめる上でも、少なくともcDNAがクローニングできた遺伝子群については、再構成実験、ノックダウン細胞を用いた細胞死抑制部位の同定、具体的には脂質酸化の上流で機能しているのか、MEK-ERKの上流で機能しているのか、下流で機能しているのかについて明らかにし、一連の実験で明らかにした遺伝子の分布、機能部位の表の完成を目指す。できれば再構成系で確定できた6遺伝子に関してはリコンビナントタンパク質の発現系を作成し,機能解析を行いたいと考えている。
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