研究課題
GPx4は生体膜リン脂質の酸化一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシドをグルタチオン依存的に還元する酵素である。我々はこれまでにタモキシフェン誘導型GPx4欠損MEF細胞が脂質酸化依存的なカスパーぜ非依存性の新規細胞死を誘導することを見出していたが、近年、抗がん剤による鉄依存性脂質酸化依存的細胞死(フェロトーシス)が注目され、GPx4がフェロトーシスの制御因子であることが報告された。しかし、GPx4欠損細胞死とフェロトーシスが同じ細胞死メカニズムであるのか、その実行因子については明らかではなかった。そこで網羅的shRNAライブラリーレンチウィルス感染により、タモキシフェン添加によるGPx4欠損細胞死を96時間後でも抑制している遺伝子(Lipo遺伝子)を44個見出し、そのcDNAをクローニングして、ノックダウン細胞に再導入したのちに、タモキシフェン添加により致死が回復する遺伝子を5個同定することに成功した。タモキシフェン添加によるGPx4欠損細胞死では、24時間後にリン脂質ヒドロペルオキシドの生成、36時時間後にMEK,ERKのリン酸化が起きる。そこで5個のノックダウン細胞を用いて、ノックダウン細胞が脂質ヒドロペルオキシド生成の上流で機能しているのかについて、フローサイトメトリーを用いて、ERKの活性化をリン酸化抗体による細胞染色により評価したところ、Lipo-1は脂質酸化の上流にて、Lipo-2 Lipo-4 Lipo-5はERKのリン酸化より上流で、脂質酸化の下流で機能すること、Lipo-3はERKリン酸化の下流で機能する可能性が高いことを明らかにした。またこれらのノックダウン細胞はサルファサラジンによるフェロトーシスを抑制できなかった。以上の結果からGPx4欠損細胞死とフェロトーシスは異なる細胞死メカニズムであることを明らかとした。
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