本研究課題では、KSHVウイルスによる直接的な免疫抑制性サイトカインIL-10の発現誘導メカニズムの解明を目的とした。平成26年度には、IL-10遺伝子プロモーター上でのK-RTA反応性のDNA領域の決定を試みた結果、IL-10のORF上流256baseの領域にK-RTAに応答する部位を見出した。一方、K-RTAは塩基配列特異的なDNA結合蛋白質であるが、H26年度に同定したIL-10遺伝子プロモーター領域上にはK-RTAの結合配列は認められなかった。そこでH27年度には、K-RTA反応領域DNAに結合する介在蛋白質の存在を検証した。K-RTAに応答するIL-10のORF上流256baseの領域には複数の他の転写因子の結合可能配列が存在するため、ミュータジェネシス法を利用してその領域内におけるK-RTA反応性DNA配列を探索したところ、特定の転写因子が認識すると思われる配列が重要な役割を果たしていることが明らかになった。 H27-28年度には、この転写因子とK-RTAによるIL-10遺伝子プロモーターの活性化相乗効果を見出した。このことから、K-RTAとこの転写因子が機能的な相互作用を持っていることが示唆されたが、詳細な解析を行った結果、K-RTAとその因子との直接的物理的会合は明快には結論できなかった。そこで、第三の因子を介在とする間接的な相互作用の可能性を検討するため、K-RTAによるIL-10プロモーター活性化に影響を与える転写アクチベーターやリプレッサーの関与を探索した結果、K-RTAはアセチル化されていること、並びに、HATであるp300やHDAC阻害剤がK-RTAの転写活性を増強することなどが判明した。以上のことから、アセチル化因子による転写複合体がK-RTAのIL-10 プロモーター活性化に関与する事が明らかになった。
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