研究課題/領域番号 |
26460078
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
礒濱 洋一郎 東京理科大学, 薬学部, 教授 (10240920)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | シェーグレン症候群 / アクアポリン / 視神経脊髄炎 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群(SjS)は涙腺や唾液腺などの外分泌腺に炎症を生じ,乾燥症状を呈する難治性の自己免疫疾患であるが,病態形成と直結する原因については未だ不明である.本研究では,SjSの自己抗体がAQP5を標的としている可能性を考え,SjS患者血清中の抗AQP5抗体の有無を調べた. まず,血清中のAQP5自己抗体の有無を判定するための実験系の構築を行った.AQP5を安定発現するHEK-293細胞を作製し,本細胞を標本として,患者由来の血清用いて蛍光免疫染色した.その結果,活性の程度にバラつきはあるものの,本年度中に調べた34検体の患者血清のうち,23検体でAQP5に対する染色像が観察され,陽性率は約68%であった.またAQP5を導入しなかったMock細胞では反応しなかった.特に,6検体の活性は非常に高く,市販の抗体に匹敵する強い蛍光を認めた.従って,少なくとも一部のSjS患者の血中には抗AQP5自己抗体が存在することが明らかとなった.また,各患者血清から調製したIgG分画を用いて同様の実験を行ったが,血清の結果とほぼ一致した染色活性が見られ,これらの抗AQP5自己抗体が主にIgGに由来すると考えられた. 次に,患者血清中のAQP5自己抗体の交叉反応性を調べるため,中枢神経系型のAQP4発現細胞を調製し,同様の免疫染色を行った.すると,AQP5に対して陽性であった23検体のうち6検体はAQP4にも免疫活性を持つことが分かった.AQP4に対する自己抗体は,視神経脊髄炎(NMO)の原因となることが近年知られており,また,NMOはSjSの重篤な合併症でもある.本成績は,SjS患者でNMO合併を予見する重要な知見と考えられる. 本研究は未だ基礎的段階ではあるが,今後,抗AQP5自己抗体の機能を明らかにするとともに,抗体の有無と患者の病態の特徴の相関などを検討することで,SjSの新たな診断および治療を考えるための有益な情報が得られると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者血清については,50検体を目標に抗AQP5自己抗体の有無を評価しているが,既に34検体まで達成できた.その結果,実に68%の患者で陽性であったことは,本自己抗体がシェーグレン症候群の病態形成と密接な関係にある診断マーカーとなる可能性を強く示唆できたと考えられる.また,自己抗体の特徴についても,既にIgG分画に依存することや,一部の患者血清ではAQP4にも交叉反応性を示すことも明らかにしており,視神経脊髄炎の合併症の発症を予見できるマーカーとなる可能性も示すことができた.しかし,AQP5機能および細胞内局在に対する自己抗体の作用については,未だ検討中であり結論に至っていない.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,さらに検体数を増やして抗AQP5自己抗体の存在とシェーグレン症候群の関係を明確にする予定である.また,内因性のAQPを持つ細胞株を用いたin vitroの実験で,AQP5の水チャンル機能に対する本自己抗体の役割を明確にするとともに,著明な反応性を示した抗体については,エピトープの同定を予定している.
|