研究課題/領域番号 |
26460079
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 典子 星薬科大学, 薬学部, 教授 (50277696)
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研究分担者 |
今井 正彦 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40507670)
高橋 勝彦 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80307066)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レチノイン酸 / レチノイル化 / 蛋白質修飾 / シグナル伝達 / プロテインキナーゼA / 遺伝子発現調節 |
研究実績の概要 |
ビタミンAの活性型であるビタミンA酸 (レチノイン酸、RA) は、生命の維持に欠かせない重要な作用を示す。RAはヒト前骨髄性白血病細胞 (HL60細胞) を顆粒球様細胞に分化誘導させることから、現在急性前骨髄球性白血病患者の治療に使われている。本研究ではRAの核内受容体を介さない作用機構に着目し、cAMP依存性リン酸化酵素 (PKA) 等のシグナル分子 及び ヒストン等の核内分子へのRAによる翻訳後蛋白質修飾を解明し、RAによるエピジェネティクス制御という新しい概念を提唱することにある。今年度はRAによるHL60細胞の分化誘導に伴うヒストン蛋白質 (H2A、H2B、H3、H4) の変化 及び RA処理により変化する細胞タンパク質について検討を行った。先ず、未処理、RA処理したHL60細胞から調製した抽出画分中のタンパク質をMono Qカラムで分離しヒストンの粗精製を行った。各抗ヒストン抗体を用いて免疫染色を行い、溶出フラクションを確認したところ、全てのヒストンはボイドフラクションに検出された。次に、このフラクションに対しMono Sカラムを行いヒストンを確認したところ、異なる位置に各ヒストンが検出された。また、RA処理細胞ヒストンは未処理細胞ヒストンとは異なる位置に溶出した。以上の結果から、RA処理によってヒストン修飾に変化が生じた可能性が示唆された。また、RA処理したHL60細胞中のGAPDH蛋白質の発現変動を検討したところ、Lysis Bufferの組成によりGAPDH蛋白質の抽出率に差異が生じ、pIに変化が見られたことから、RA処理によりGAPDHが翻訳後修飾を受ける可能性が考えられた。今後再確認を行い修飾変化を同定していく。以上、RA処理により異なる細胞内挙動を示す蛋白質を見出し、レチノイル化、リン酸化といった修飾が変化した可能性を示唆した。この変化が細胞分化をもたらすかを今後検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛋白質を扱うので時間を要するが、現在のところまでは、ほぼ計画通りに進んでいる。各種修飾蛋白質等の同定に時間と労力と費用を要しているが、辛抱強く研究を行い、着実に確かな結果を出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PKA によりリン酸化される蛋白質と新規のレチノイル化蛋白質の同定を行っている。同定はできてもその機能、即ちレチノイル化修飾の意味を解明しなければならない。先ずは、レチノイル化PKAによる核内タンパク質(ヒストンを含む)のリン酸化へのRAの影響を詳細に調べ、核内蛋白質のレチノイル化の生体内意義を解明していく。また、PKAによりリン酸化される可能性のある候補蛋白質がPKAによりリン酸化されていないかを免疫染色法で検討する。さらに、遺伝子の発現調節に関わるヒストンのアセチル化、メチル化、ユビキチン化に及ぼす影響について解析し、新しいエピジェネティクス制御機構をレチノイル化或いはRAの観点から解明する。また、RAの標的を見出し、これらの機構を制御する因子を探索し、その医薬品としての可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初各年度の実験の中で、レチノイル化蛋白質を二次元電気泳動により分離し、蛋白質をSYPROで染色後、ブロッティング、免疫染色を行うことを計画していた。この検出・解析に長時間を要したため、次年度の計画を前倒しで行っていた。この蛋白質の同定が年度を跨ぐことになったため、この経費(使用額)を来年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
蛋白質の同定に必要なMALDI/TOF-MS解析の費用、及び、免疫染色に必要な各種抗体の購入費用に使用する。
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