多剤耐性緑膿菌のアミノ配糖体耐性をRND型多剤排出系MexXY依存的に阻害するベルベリンの作用機構を解析し、さらにベルベリンの作用を増強するベルベリン誘導体を構築した。 ベルベリンは、1)MexXY系の基質であること、2)MexXY依存的にアミノ配糖体と相乗的に作用すること、3)アミカシンとベルベリンのMexYに対する推定結合部位は近接していることが示唆された。以上の結果からベルベリンは基質認識部位の競合によりMexYのアミカシン排出を阻害すると考えられた。現在部位特異的変異導入によりMexYの変異体を構築し、さらに詳細な解析を進めている。ベルベリンは、親水性の極めて高いアミノ配糖体の排出活性を阻害するという点で既知の緑膿菌多剤排出系阻害剤(phenylalanine-arginine-β-naphthylamideやピペドピリミジン誘導体ABI-PP)とは異なる新規のタイプの排出系阻害剤である。 ベルベリン誘導体XとYが、ベルベリンと比較して4から16倍低濃度で多剤耐性緑膿菌のアミカシン耐性を阻害した。化合物XのMexXY系阻害活性はベルベリンと同程度であり、化合物YのMexXY系阻害活性はベルベリンの約16倍であった(化合物Yの位置異性体のMexXY系阻害活性はベルベリンと同程度である)。化合物Xは、MexXY系阻害に加え、別の耐性系を阻害するまたは抗菌活性を増強させることで多剤耐性緑膿菌のアミカシン耐性を軽減すると考えられた。さらに化合物XとYは、MRSAを含む黄色ブドウ球菌にも抗MRSA薬と同程度の抗菌活性を示した。現在さらにMexXY阻害作用の増強したベルベリン誘導体の合成を試みている。
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