研究課題/領域番号 |
26460081
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
久家 貴寿 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (20551857)
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研究分担者 |
中山 祐治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (10280918)
朝長 毅 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, その他 (80227644)
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
佐々木 光穂 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, 研究員 (20432536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FAM83H / エナメル質 / 歯 / カゼインキナーゼI / ケラチン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、FAM83Hの遺伝子変異によって起こるエナメル質形成不全症が、どのようなメカニズムで起こっているのかを解明することである。本年度、先ずは、FAM83H変異体が、エナメル上皮系細胞株に与える影響を調べた。FAM83H変異体は、カゼインキナーゼI(CK-1)と結合し、その結合に依存して、ケラチン細胞骨格を異常にさせた。このことを含めて我々の結果は、FAM83H変異体がCK-1の機能をドミナントネガティブに阻害していることを示唆している。ケラチン骨格は細胞間、細胞-細胞外基質間接着の構築に関与している。我々の結果は、FAM83H変異体発現によるケラチン骨格異常が、細胞間接着を脆弱にしてしまう可能性も示唆している。次に、CK-1を介したケラチン骨格制御機構をより詳細に調べることを目的に、リン酸化プロテオーム解析を行った。ケラチンタンパク質の、特定のセリン・スレオニン残基のリン酸化レベルが、CK-1の阻害で低下することが示唆された。これらのリン酸化がケラチン骨格の構造制御に関わっているのかどうかを今後調べる。最後に、FAM83H遺伝子改変マウスを、CRISPR/Casシステムを用いて作成した。これまでに、3系統の遺伝子改変マウスが誕生している。現在は、遺伝子改変マウスの歯の組織学的解析を進めている。今後、培養細胞を用いて得られたFAM83H変異体に関する知見が、モデルマウスで再現されるのかどうかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに我々は、大腸がん細胞を使って、FAM83HがカゼインキナーゼI(CK-1)の制御因子であること、CK-1を介してケラチン骨格を制御していることを明らかにしてきた。本研究の、初年度当初計画は、FAM83Hがエナメル上皮系細胞でも、大腸がん細胞での結果と同様に、CK-1とケラチン骨格を制御しているのかどうかを調べる事であった。エナメル上皮系細胞ではケラチン14が特徴的に発現しており、大腸がん細胞ではケラチン14は発現していない。したがって、このタイプのケラチン骨格をFAM83Hが制御しているのかどうかを明らかにする必要が有った。本年度の研究結果によって、FAM83Hがエナメル上皮系細胞のケラチン骨格についても、CK-1を介して制御している事が明らかとなった。また、FAM83H疾患原因変異体は、CK-1の機能を阻害することで、ケラチン骨格を異常にすることも明らかになった。以上のように、当初に計画した課題は予定通りに遂行された。計画以上に進展した点は、FAM83H遺伝子改変マウスを作成したことである。CRISPR/Casシステムを導入したことにより、ヒトの疾患と同様の変異を持つマウスを作成することができた。この遺伝子改変マウスでは、実際に歯の異常が見られている。このモデルマウスを使うことで、vivoレベルでFAM83H遺伝子変異の作用を調べることが可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果は、FAM83H変異体が発現すると、ケラチン骨格が異常となり、細胞間接着などが脆弱になることを示している。今後は、この現象が実際に、エナメル質形成不全症の原因となっているのかどうかを明らかにする。エナメル質形成を担うエナメル芽細胞は細胞シートを作る。この細胞シート形成が異常になると、エナメル質形成が不完全になると考えられている。細胞間接着、細胞-細胞外基質間接着に関わる、デスモソームタンパク質、ヘミデスモソームタンパク質が異常になるとエナメル質形成不全症が起こることが知られている。デスモソーム、ヘミデスモソームはケラチン骨格によって構造が維持されており、ケラチン骨格の異常もまた、エナメル質形成異常の原因となる。これらのことを考えると、FAM83H変異体はケラチン骨格異常を介して、エナメル芽細胞シートを異常にしてしまう可能性が考えられる。この仮説を証明するための実験を今後、培養細胞とモデルマウスを使って行う。また、本年度、CK-1の活性に依存してリン酸化されているケラチンタンパク質を同定したので、そのリン酸化の変化がエナメル質形成不全症のメカニズムに関わっているのかどうかも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、試薬の購入が、来年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度未使用分は、計画通りに、試薬購入に充てる。この未使用分が平成27年度の使用計画に与える影響は無く、平成27年度分の予算は当初計画通りに大部分を消耗品費として使用する。
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