研究課題/領域番号 |
26460083
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
喜多 綾子 近畿大学, 薬学部, 助教 (00388498)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | タンパク質リン酸化酵素 / 細胞内輸送 / 分裂酵母モデル生物 |
研究実績の概要 |
本研究は分裂酵母モデル生物を用いて、細胞内シグナル伝達経路と細胞内輸送システムの関係を明らかにすることを目的としている。 本年度の成果として、分裂酵母キナーゼノックアウトコレクションを用いた表現型を指標としたスクリーニングを行い、キナーゼノックアウト細胞の表現型を解析した。細胞内輸送に関わる因子をノックアウトした細胞に多い表現型やカルシニューリンとPmk1 MAPキナーゼ経路の拮抗的な関係を利用した独自の遺伝学的アプローチを利用し、細胞内輸送に関わる因子やMAPキナーゼに関わる因子の探索を行った。興味深い成果として、細胞内輸送システムの主要経路であるオートファジーに関わるキナーゼAtg1をノックアウトした細胞がPmk1 MAPキナーゼノックアウト細胞と同様の表現型を示すことを見出した。さらに、atg1ノックアウト細胞において、Pmk1 MAKキナーゼのリン酸化レベルが低下していることからAtg1はPmk1の活性化に関与していることが判明した。また、オートファジーに関わる因子とMAPキナーゼ経路との細胞内カルシウム濃度を介した関わりについて興味深い知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本課題申請時の計画通り、分裂酵母キナーゼノックアウトコレクションを用いた表現型を指標としたスクリーニングを行うことで、本研究課題の目的である細胞内シグナル伝達と細胞内輸送のクロストークを明らかにするための重要な知見を得ることができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度得られた知見をさらに発展させ、オートファジーに関わるタンパク質リン酸化酵素がどのようなメカニズムでMAPキナーゼを制御しているのかを解明する。具体的には、atg1ノックアウト細胞と細胞内カルシウム濃度を制御している各種因子との関わりを調べる。また、分裂酵母キナーゼノックアウトコレクションを用いた表現型を指標としたスクリーニングにより得られた知見をもとに、細胞内輸送によって制御を受けていると考えられるキナーゼ、あるいはPmk1 MAPキナーゼと関わる可能性のあるキナーゼを選び出し、遺伝子のクローニング、ダブルノックアウト細胞の作製など遺伝学的手法を用いた解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養や実験に使用する試薬の節約、プラスチック製品などのリユースに努め、当初の予定よりも少ない経費で研究を推進することができたため、未使用経費を次年度に使用することにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度未使用経費は、本研究課題のデータ整理、データ保存のためのパソコンの購入に充てる予定である。また、本研究課題遂行にあたり、施設・設備面ではほぼ完備しているため、残りの経費は研究推進に必要な試薬・消耗品に使用するつもりである。具体的には、遺伝子をクローニングするためのDNAオリゴ発注、細胞培養、分子生物学的実験などに関する試薬やプラスチック製品などの消耗品に充てる。
|