研究実績の概要 |
摂取したビタミンKは、生体内で「MK-4生合成酵素」であるUBIAD1 (UbiA prenyltransferase domain containing 1)によりビタミンK2(メナキノン-4, MK-4)に変換される(Nature 2010)。UBIAD1は種を超えて保存されており、ショウジョウバエやゼブラフィッシュではその変異が発生異常を引き起こす。しかし、哺乳動物におけるUBIAD1の機能は十分に解析されていないため、我々は組織特異的UBIAD1遺伝子欠損マウスを作出し、解析を行っている。特にUBIAD1は脳で最も発現が高く、MK-4も脳内で高濃度に蓄積していることから、脳で重要な役割を担っていると予想される。本研究では、世界に先駆けて脳特異的にUBIAD1遺伝子を欠損したマウスを作出し、UBIAD1とMK-4の脳神経機能における役割の解明および脳神経変性疾患への関連性を解析した。Nestin依存的にCreリコンビナーゼを発現するNestin-creマウスを用いて脳神経特異的UBIAD1欠損マウス(Nes-CKOマウス)を作出した。Nes-CKOマウスは、脳全体でUBIAD1が欠損しており、脳内MK-4濃度も検出限界以下まで低下した。出生後より成長不全があり、運動協調性の低下、短期記憶能力の低下など脳機能異常が認められ、小脳萎縮とプルキンエ細胞の消失が観察された。しかし、神経細胞のみで欠損が起こるSynapsin依存的UBIAD1欠損マウス(Syn-CKO)ではプルキンエ細胞の消失のみが40週齢以上の高齢の時点で認められるのみで、大きな機能異常は観察されなかった。このことから、神経細胞の形成早期におけるUBIAD1の欠損が、脳機能の異常を引き起こしていると推察された。今後脳機能異常が発症するメカニズムについて解析する予定である。
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