研究課題/領域番号 |
26460087
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
牧瀬 正樹 崇城大学, 薬学部, 准教授 (80433001)
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研究分担者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Nup88 / ビメンチン / 核膜孔 / がん / ヘッジホッグ経路 / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
本年度は、Nup88とビメンチン双方の結合ドメインの決定とこの結合を阻害するペプチドを探索するとともに、Nup88と上皮間葉転換との関係を、細胞運動性あるいは関連因子の遺伝子およびタンパク質レベルでの発現変化の点から検討した。 まず、Nup88とビメンチンとの結合を競合的に阻害するペプチドのスクリーニングに関して、ターゲットとなる両タンパク質の結合ドメインの同定を進めたところ、Nup88側の結合ドメインは同定できなかったが、ビメンチン側の領域として、ビメンチン繊維の脱重合に必要なN末端の約100アミノ酸残基を同定した。同定したビメンチン側のNup88結合部位に対する阻害ペプチドの探索は行わなかった。 次に上皮間葉転換との関連性について、ビメンチンを発現しているHeLa細胞と発現していないMCF-7細胞においてNup88を過剰発現した場合の細胞運動性に対する効果を調べた。結果として、Nup88はビメンチンに依存して細胞運動性を促進する可能性を示した。さらにNup88過剰発現細胞に対する上皮間葉転換の促進因子であるTGFβの効果や、上皮間葉転換の促進因子の発現を検討したが、目立った変化はなかった。 最後に、HeLa細胞とMCF-7細胞のNup88発現株を利用して上皮間葉転換関連遺伝子の発現変化を網羅的に調べ、両細胞株において共通して発現変化する11個の遺伝子を得た。このうち、ヘッジホッグ経路を構成する因子に注目し、その遺伝子およびタンパク質の発現量が大きく変化することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度から継続して、Nup88とビメンチンの結合を阻害するペプチドのスクリーニングを目指し、標的となる双方の結合ドメインの同定を試みていたが、結果としてビメンチン側のNup88結合ドメインしか同定できなかった。この領域の過剰発現はビメンチンの重合を阻害することがわかっており、これを標的にしたペプチドをスクリーニングしてもNup88との結合を特異的に阻害することが期待できなかったためペプチドのスクリーニングを断念した。したがって、この研究に関しては必ずしも全ての順調に進展したとは言えない。 一方、H28年度に実施を計画した研究に関しては、震災によって研究活動の停止を余儀なくされたにもかかわらず、一部の研究をH27年度後半から前倒しで実施したことが奏効して順調に進展した。 以上から、全体として、計画は概ね順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の遂行により、Nup88がヘッジホッグ経路を介してがんを悪性化するという全く新しい機構の存在が示唆されつつあるので、これの詳細な解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震によりダメージを受けた施設や機器類の復旧・回復に多くの時間を要し、研究活動を円滑に進めることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
一部の機器のメンテナンスのほか、研究消耗品の購入に充当する。
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