研究実績の概要 |
レチノイン酸とはビタミンAの活性代謝物である。レチノイン酸は妊婦が大量に摂取すると催奇形性があることが知られている。しかし、その詳しい体内分布は未解明のままであった。我々は蛍光タンパク質間のFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を用いたレチノイン酸プローブ、GEPRAを開発した。これまでにGEPRAを用いてゼブラフィッシュにおけるレチノイン酸濃度勾配と胎仔後脳の形態形成との関係を明らかにしてきた。 しかし、GEPRAは哺乳類細胞に発現させると、発現量の高い細胞においては凝集体を形成するなどの問題点があった。マウスでのイメージングにおける障害となる。GEPRAを遺伝子工学的に改変することにより、発現量が高くなっても細胞質に一様に発現させることに成功した。また、この手法はその他の蛍光プローブにも一般的に適用可能であることを示した。続いて、この改良型GEPRA (mGEPRA, mammalian GEPRAと命名)を発現するトランスジェニックマウスの作出に成功した。脳など様々な臓器を摘出し、レチノイン酸分布を検討したところ定量的にレチノイン酸濃度勾配を検出することが可能であることが分かった。現在、胎仔、成体のレチノイン酸可視化を進めている。 更に我々は発光バージョンのGEPRAの開発も進めた。in vivoイメージングにおいては自家発光が定量的イメージングを妨げる。そのシグナル変化量はオリジナルよりも小さいものの、発光バージョンのGEPRAの開発に成功した。現在、そのシグナル変化を増大すべく改良を行っている。
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