研究課題/領域番号 |
26460091
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
久光 隆 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50327946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NaH交換輸送体 / カルシニューリン / 細胞内pH / 心肥大 |
研究実績の概要 |
Na/H交換輸送体NHE1の結合蛋白質として心肥大形成に関わる脱リン酸化酵素カルシニューリン(CaN)を発見Na/H交換輸送体NHE1の結合蛋白質として心肥大形成に関わる脱リン酸化酵素カルシニューリン(CaN)を発見し、NHE1自身の活性化によるおそらく近傍のアルカリ化により直接結合したCaNが活性化され、下流の転写因子NFATの活性化を引き起こし、肥大化関連遺伝子の発現を促進するという新たなシグナル伝達機構が存在することを提案してきた。しかし、CaNによるNFATの脱リン酸化反応には両者の結合が必須であり、CaNは同一部位を介してNHE1またはNFATと結合することから、CaN/NFAT経路の活性化にはCaNがNHE1から一旦解離する必要があるが、その機構はまだ分かっていない。 そこで平成26年度は、どのような機構でNHE1からCaNが解離し、下流のNFATにシグナルが伝わるのか、CaNのNHE1からNFATへの移行はそれぞれの結合親和性の差によって起こると予想し、検討した。野生型NHE1が持つCaN結合配列をNFAT由来のそれと置き換えたNHE1変異体を発現する細胞を用いて調べたところ、共沈するCaN量は変異体NHE1で多かった。これらの細胞の細胞内CaN活性をレポーターアッセイで調べたところ、変異体NHE1発現細胞ではCaN活性増幅作用は認められなかった。また、野生型NHE1のCaN結合配列のアラニンによる一置換変異体を発現する細胞を用いて調べたところ、共沈するCaN量は変異体間で差があり、野生型よりも多くても少なくてもCaN活性化作用は消失した。これらの結果は、野生型NHE1のCaNに対する結合親和性がNFATのそれよりも低いこと、野生型NHE1がもつ強すぎず、弱すぎずの中間的な親和性が効率的なシグナル伝達に重要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画の一つ、NHE1とCaNとの適度な均衡の取れた結合がNFATへのシグナル伝達効率を決めている、という仮説が正しいことを示す証拠が集まっている。また、2つめの計画、NHE1分子近傍のpHを測定する実験については、プローブを作成し、条件検討を行っているところであり、おおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、pHシグナル経路の存在とそれを支持する分子の構成と役割を示そうとするものであり、まずはNHE1によるCaN活性化の機構を明らかにし、さらに他の分子の関与を示すことを目標とする。局所pHの測定は、実験条件の設定が難しいことが分かってきたが、本研究の重要な位置を占めるので注力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入にかかる金額が当初予定より低いことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、若干の計画変更に伴いNHE1とCaNの結合定数を求める為に必要な合成ペプチドおよび蛍光標識試薬を比較的大量に購入する必要があるのでこれに充てる予定である。
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