研究課題
Na/H交換輸送体NHE1の結合蛋白質として心肥大形成に関わる脱リン酸化酵素カルシニューリン(CaN) 発見し、NHE1に結合したCaNがおおそらくNHE1自身の活性化による近傍のアルカリ化により活性化されることで下流の転写因子Nuclear Factor of Activated T-cell (NFAT)の核移行を引き起こし、肥大化関連遺伝子の発現を促進するという新たなシグナル伝達機構が存在することを提案してきた。最近申請者らはTRPファミリーに属するCa透過性チャネルとNHE1が物理的に相互作用することを見つけた。CaNの活性化にはCaイオンが必須である。そこで、当該チャネルがNHE1によるCaN/NFAT活性化機構に影響するか調べた。内在性NHE活性を持たない細胞株に外来性のNHE1とチャネルを発現し共免疫沈降実験を行ったところ両者は共沈した。このような細胞を免疫染色すると両者の一部は形質膜でドット状に重なって染色され、それらの一部は脂質ラフトマーカーとも重なった。この結果と一致するように、これらの細胞のtriton x-100可溶化ライセートをショ糖密度勾配遠心で分離したところ、NHE1、CaN、チャネルの一部は脂質ラフトまたはカベオラマーカーと同じ画分に存在した。これらのことから、NHE1、CaN、チャネルの一部は、形質膜の脂質ラフトで複合体を形成していうると考えられた。一方、NFAT応答配列を持つルシフェラーゼによるレポーターアッセイでチャネルのNHE1によるCaN/NFAT活性化機構に対する影響を調べたところ、内在性CaN/NFAT経路はNHE1またはチャネルそれぞれを単独で発現させた場合よりも両者を共発現させた場合に相乗的に活性化した。これらの結果は、チャネルとNHE1/CaN複合体が機能的にも相互作用していることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究実施計画の一つ、NHE1と物理的に相互作用する事が分かってきたあるCa透過性チャネルが、機能的にもNHE1によるCaN活性化機構と相互作用することが分かった。膜局所で形成されるpHシグナルを担う複合体の構成因子の一つが明らかになろうとしていると考えている。
本研究課題は、ほぼ当初計画通り進んでいるのでこのまま進めていきたい。局所pHの測定は難航しているが様々な事を考慮して引き続き検討を進める。
当該年度の使用額は、ほぼ予定通りの使用であったと考えている。
当初計画通りに執行する予定である。
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FASEB Journal
巻: 29 ページ: 960.25