医薬品の約半数はGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的としている。GPCRのアロステリックリガンドは、内在性の神経伝達物質やホルモンなどの生理的作用を促進する、オルソステリック薬(これまでの治療薬)の特異性を高める等、副作用が少ない治療法として期待されている。しかし、アロステリックリガンドの検出は難しい。検出にはリガンド結合実験と細胞応答測定が用いられるが、前者は、比活性の高い標識リガンドが無い場合、行うことはできない。後者は、測定する細胞応答の種類や、使用するオルソステリック薬の種類によって、用量効果と最大応答が複雑に大きくばらつく。本研究では、細胞応答の種類やオルソステリック薬の種類に影響されない、細胞応答測定のみでできる(リガンド結合実験が不要な)アロステリックリガンドの親和性解析法を開発することを目的とした。 まず、GPCRへのアロステリックリガンド結合に関する全ての媒介変数を推定する理論と条件を確立することを試みた。この解析法を実証するために、野生型M2ムスカリン性アセチルコリン受容体(M2受容体)または恒常的に活性化させた変異型M2受容体を培養細胞に発現させて、各種作動薬で刺激し、細胞応答を測定することにより、必要なデータを収集した。また、この解析法が様々な細胞内シグナル系に対する作動薬の選択性(リガンドバイアス)の定量に可能か調べるため、リガンドバイアスの定量に適した細胞応答測定法として、TGFα切断アッセイの確立を行った。本年度は、この解析法で得られる値が、リガンド結合実験から得られる値と同様であることを実証するために、リガンド結合実験を行った。また、親和性が低いリガンド結合を測定するため、測定法を最適化した。 この解析法を用いることにより、リガンド結合実験ができない場合でも、細胞応答測定のみでアロステリックリガンドの親和性解析が可能になると思われる。
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