研究実績の概要 |
平成28年度研究実施計画に従って研究を遂行した。1)ガラクトース結合のラクトシルセラミドが NADPH オキシダーゼを活性化し活性酸素を生成させリン酸化シグナルを介して cPLA2 alpha を活性化することを明らかにした。ガラクトース結合脂質やスフィンゴミエリン (SM) はセラミドキナーゼ活性を変化させなかった。2)SM合成酵素の発現、活性制御機構の解析とSMの薬理作用を解析した。細胞をTNFalphaやTGFbeta-1などで処理した場合に、SM 合成酵素の発現及び活性に変動は観察されなかった。セラミドキナーゼを遺伝子導入した細胞や、活性型Src を強制発現させた細胞においてもSM 合成酵素の発現や活性は変化しなかった。SM 合成酵素は安定的に機能していると推定された。3)cPLA2alpha, SM 合成酵素、セラミドキナーゼ活性制御能を有するスフィンゴ脂質誘導体の解析を行った。三種の酵素に関して、連携研究者が作成したスフィンゴ脂質関連化合物ライブラリーを解析した。従来の阻害薬以上の活性を有する化合物は得られなかった。新規に作成した二つの蛍光団(緑色NBD と赤色BODIPY)を有するセラミドの薬理作用を検討したところ、SM 合成酵素により代謝されるが、セラミドキナーゼによっては代謝されない化合物を見出した。4)セラミドキナーゼノックアウトマウスにデキストラン硫酸含有水を摂取させ潰瘍性大腸炎の発症度を正常マウスと比較した。セラミドキナーゼノックアウトマウスでは、生存率の低下傾向が観察された。同様な傾向が大腸の組織切片染色、リンパ球浸潤からも観察された。5)ミトコンドリアに多く存在するカルジオリピンとセラミドキナーゼのミトコンドリアでの共存を検出しようと試みた。今回の蛍光標識セラミドキナーゼの細胞内局在の検出法でははっきりとした実証が得られなかった。
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