研究実績の概要 |
遺伝性腎炎Alport症候群(AS)は, COL4A3/4/5の遺伝子変異により発症する. ASは, 小児で最も多い遺伝性腎疾患であること, また, 末期腎不全への移行が早く, 重症例では10代後半から20代に末期腎不全を余儀なくされることから, 若年透析導入の主因となっている.そこで, 本研究では, ASの原因タンパク質の細胞内挙動の制御機構解明を目的に, AS の原因タンパク質である COL4A3/4/5に着眼し, 中でも, 遺伝子変異が患者の 8 割以上を占めるCOL4A5 の細胞内挙動に影響する分子及び分解機構の解明を行った. その結果, 野生型・変異型COL4A5の分解速度に違いはなく, 共にGolgiを介して分解されることを見出した. さらに, 各種ERシャペロンのCOL4A5細胞内挙動に対する影響を検討したところ, 分泌の正の制御因子として GRP94を, 負の制御因子としてBiP, PDIを同定した. また, 興味深いことに, collagen シャペロンとして知られるHSP47が, COL4A5の分解を促進するといった, これまでにない新たなcollagen発現制御機構を明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
COL4A5 の細胞内挙動に関しては, 今後, 野生型・変異型COL4A5の網羅的な三量体形成能の評価および三量体形成促進する新規化合物のスクリーニング系を構築することで創薬研究へ発展させる予定である. 一方, ASの根治療法を目指す為には, ASの病態の進行を正または負に制御する分子を明らかにし疾患の標的になり得るかを検証することも重要である. 今後は, ASモデルマウスを用いたマイクロアレイ, プロテオーム解析を行ない, 疾患標的分子の探索に努める予定である.
|