研究課題/領域番号 |
26460100
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
前田 智司 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (60303294)
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研究分担者 |
松浦 誠 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (00405846)
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40305991)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / カルシウム / Herp / ユビキチン / プロテアソーム / 高速共焦点レーザー顕微鏡 |
研究実績の概要 |
小胞体のタンパク質品質管理機構の破綻は小胞体ストレスとして多くの疾患の発症や病態形成に関与する可能性が示唆されている。小胞体ストレスで誘導されるHomocysteine-induced ER protein (Herp)は機能が不明な小胞体局在タンパク質である。したがって、Herpの小胞体における機能を明らかにすることは、小胞体ストレスによって引き起こされる疾病の発症原因や治療法開発に繋がる可能性が考えられる。そこで、本申請においては、特にカルシウム放出調節機構に焦点をあて小胞体でのHerpの機能解析を行う。さらに、小胞体でのカルシウム放出機構以外にHerp自身の分解機構も含め、小胞体関連分解(ERAD)においてどのような機能(役割)を担っているか詳細な検討を行う。 本年度は、小胞体におけるカルシウム動員機構およびHerpの分解機構の解明を中心に研究を展開した。1. Herp欠損細胞において小胞体からのカルシウム動員が抑制されることを空間的および時間的解像度に優れた高速共焦点レーザー顕微鏡(Nikon RCM/Ab)を用いて確認を行った。さらに、Herp siRNAを用いてHerpをノックダウンし、小胞体からのカルシウム動員が抑制されることも観察した。 2. Herpの分解機構の解明:Herpの半減期は約2時間であり、その細胞内量は厳密に制御されていることが考えられるが、制御機構を含め詳細はほとんど解明されていない。そこで、小胞体局在ユビキチンリガーゼであるシノビオリンがHerpと相互作用することが報告されているので、シノビオリンを中心に分解機構の解明を進めた。その結果、ユビキチンープロテアソーム系とユビキチンープロテアソーム系以外のHerpの分解機構で存在していることを明らかにし、その詳細な機構の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、平成26年度の研究実施計画に記載した予定どおりにほぼ研究が進み、Herpの分解機構に関して、研究結果をまとめ論文に投稿中である。また、小胞体におけるカルシウム動員機構についてもHerpをノックダウンさせた場合でもHerp欠損細胞と同様にカルシウム動員が抑制されたことより、Herpが小胞体からのカルシウム動員に関与していることを強く示唆できたと考えている。さらに、Herp欠損細胞においてはカルシウムを除去した状態で培養を行うと細胞接着が弱まることが観察され、引き続き平成27年度以降もHerp欠損と細胞接着にも着目していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降はin vivo の系を中心に疾患とHerpの役割について解析を行う予定である。 また、Herp欠損細胞およびHerpをノックダウンさせた場合に観察されるカルシウム動員の抑制機構の解析を行っていく予定である。Herp欠損マウスの臓器(肝臓・脳)におけるカルシウム放出変動の解析:Herp欠損マウスにおいては、肝臓のERAD基質の分解が低下しているとともに、耐糖能の障害、脳虚血に対する抵抗性の低下を示すことが報告されている。そこで、Herpの欠損が個体または、組織のカルシウム動態にどのような影響を与えているか実際の組織を用いて(代表的に肝臓および脳)検討を行う。最初にカルシウム濃度測定が可能な組織標本系の確立と、画像解析を行う。(1) Herp欠損マウスの肝臓または脳を用いて標本を作製し、細胞内カルシウム濃度に及ぼす影響について画像解析装置(RCM/Ab)を用いて検討する。(2) 当該標本を組織化学的・電子顕微鏡学的に観察し、変化を認めた細胞の種類を同定する。(3) Herp欠損組織におけるカルシウム動態の異常が肝臓のERAD基質の分解が低下、耐糖能の障害を含め病態発症等に関与しているか検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は日本生化学会大会に参加予定を考えていたが、日程の都合上参加を取りやめたため繰越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度より岩手医科大学薬学部から日本薬科大学に転勤するため、26年度繰越した研究費は研究分担者との研究打ち合わせのための国内旅費として使用予定である。
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