研究課題/領域番号 |
26460101
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
丹野 孝一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (20207260)
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研究分担者 |
中川西 修 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (50296018)
根本 亙 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アンジオテンシンII / アンジオテンシン変換酵素 / AT1受容体 / ロサルタン / 糖尿病性神経障害性疼痛 / 抗アロディニア作用 / マウス |
研究実績の概要 |
既に我々は、アンジオテンシン (Ang) IIが脊髄において痛みの伝達物質あるいは調節因子として機能している可能性を示唆している[Mol. Pain, 9:38 (2013), Neurosci. Lett., 585:17-22 (2015)]。慢性疼痛における脊髄Ang系の役割を解明すべく、平成26年度に実施する研究では糖尿病性神経障害性疼痛における脊髄内Ang 系の関与の可能性についてストレプトゾトシン (STZ) 誘発性1型糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。その結果、STZ誘発性糖尿病モデルマウスでは血糖値の上昇とパラレルに、対照群と比較して疼痛閾値の低下、すなわちアロディニアが認められた。最も顕著な疼痛閾値の低下が認められたSTZ投与後14日目において、Ang IIタイプ2 (AT2) 受容体拮抗薬PD123319は抗アロディニア作用を示さなかったものの、Ang IIタイプ1 (AT1) 1受容体拮抗薬ロサルタンは対照群に影響を与えない用量で抗アロディニア作用を示した。糖尿病マウスの脊髄後角におけるAT1受容体、アンジオテンシノーゲン (AGT)、Ang IIおよびAng変換酵素 (ACE) の発現分布を解析したところ、AT1受容体およびAGTの発現量に変化は認められなかったが、Ang IIおよびACEに関しては対照群と比較してSTZ群において有意な発現量の上昇が認められた。以上の結果より、STZ誘発性糖尿病マウスでは脊髄後角のACEの発現量増加に起因してAng IIの生合成が促進され、Ang IIはAT2受容体ではなくAT1受容体に作用することでアロディニアを引き起こしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
購入した抗体が上手く反応したため、免疫組織学的実験が当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降はSTZ誘発糖尿病性神経障害性疼痛を含め、各種慢性疼痛時の脊髄におけるAT1受容体およびMas受容体を介する細胞内シグナリングの変化について検討を行う。具体的には以下の通りである。
①脊髄におけるAT1受容体およびMas受容体の存在細胞種の特定:脊髄疼痛伝達機構において、神経細胞と共にグリア細胞(アストロサイトやミクログリア)の活性化が重要な役割を担っている。我々はAT1受容体が脊髄後角に高密度で分布している [Mol. Pain, 9, 38 (2013)] ことを明らかにしているが、この受容体が神経細胞あるいはグリア細胞のどちらに存在しているかは不明である。そこで、共焦点顕微鏡を用いてAT1受容体がどの細胞に発現しているか、さらにMas受容体についても同様に検討を行なう。
②慢性疼痛時のMAPキナーゼ系の変化についての検討:AngⅡをマウスの脊髄クモ膜下腔内へ投与した際、AT1受容体の活性化とそれに伴うp38 MAPKのリン酸化に起因し、疼痛関連行動を誘発することを見出しているが、慢性疼痛時においてp38 MAPK のみならずERK1/2やJNKといった他のMAPキナーゼのリン酸化も生じていることが明らかにされている。そこで、慢性疼痛に伴う脊髄p38 MAPK、ERK1/2およびJNKのリン酸化がAT1受容体あるいはMas受容体が存在している細胞で起こっているのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試薬を他研究者から提供を受けたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今回の繰越額を試薬・抗体等の物品購入費に充て使用する予定である。
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