研究課題/領域番号 |
26460102
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
中川西 修 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (50296018)
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研究分担者 |
小野木 弘志 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (50610200)
根本 亙 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 記憶障害 / うつ / 神経新生 / 脳由来神経栄養因子 / 嗅球摘出 / スカブロニン |
研究実績の概要 |
昨年度の研究により、嗅球摘出 (Olfactory bulbectomy: OBX) マウスの記憶関連行動障害やうつ様行動には、海馬歯状回における神経新生の抑制が関与している可能性を報告した (Nakagawasai et al., Behav. Brain Res. 297: 315-22, 2016)。今回、in vitroで神経突起進展促進効果を有するスカブロニンG (SG) 誘導体の有効性をOBXマウスを使用し検討した。さらに、その作用メカニズムを行動薬理学的並びに免疫組織化学的手法を駆使し解明した。 以前の研究結果より、神経成長因子と同様な神経突起進展作用を示すSG誘導体の中でもメチルエステル体 (SG-ME) を用いた。OBXマウスの脳室内にSG-MEを20μg/mouse投与した際、投与直後ではなく投与24時間後に記憶関連行動障害の改善が認められた。そのSG-MEの記憶関連行動障害改善効果は、脳由来神経成長因子 (BDNF) 抗体、BDNFが作用する受容体であるTrkB受容体アンタゴニストANA12、TrkB受容体下流のextracellular-regulated protein kinase (ERK)1/2阻害薬であるU-0126をそれぞれSG-MEと前処理又は同時投与することにより抑制された。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を使用し、海馬歯状回における新生細胞の変化を観察したところ、OBXマウスでは著しい新生細胞の減少が認められたが、SG-MEを脳室内投与したOBXマウスの新生細胞は、コントロールレベルまで増加した。これらの行動薬理学的並びに免疫組織化学的結果から、SG-MEによる記憶関連行動障害の改善作用は、BDNFを遊離し、そのBDNFがTrkB受容体に結合しERK1/2を介し海馬歯状回において神経新生を促進している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規化合物であるSG-ME がBDNFの遊離を介し海馬の神経新生促進により記憶関連行動障害改善作用を示し、当初の計画通りメカニズムを明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで主に行動薬理学的手法で認められたSG-MEの記憶関連行動障害改善作用のメカニズムについて分子生物学的並びに電気生理学的手法により詳細に検討する。 一昨年度、BDNF微量注入による神経新生促進作用は、ERK/ cAMP response element binding protein (CREB)シグナル経路を活性化していることをウエスタンブロット法により認めていることから、SG-MEをOBXマウスに脳室内投与した際のBDNFの定量、CREBの活性化をウエスタンブロット法により検討する。さらに、CREBのリン酸化が海馬歯状回のどの細胞のタイプで認められるか二重染色法により検討する。 SG-ME投与後の海馬スライスを用いシナプス可塑性である長期増強作用 (LTP)に影響を及ぼすか電気生理学的検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年4月に掲載の論文(実績としては平成28年度に記載予定)がカラーの図が多く掲載料および別刷り代の請求額が高額であった。その支払いをする為残しておいた経費であったが、受領書の遅延により残金が発生してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
今回発生した残金を年度初めに使用し、さらに、もうすでに年度末から年度初めにかけ動物や試薬等の購入を継続していることから今回の予算はすべて計画通り使用できる。
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