研究課題
現在注目しているストレスタンパク質は、HSP25、GRP78(小胞体がストレスを受けたときに発現が誘導されるタンパク質)、HO-1(活性酸素に対して細胞を強くするストレスタンパク質)、GST、Catalase(SOD同様、活性酸素を消去する酵素)である。そこで、これらのストレスタンパク質の誘導(生産)がIPFの発症・重症化の抑制に寄与しているかを、各ストレスタンパク質の過剰発現マウスにおけるブレオマイシン依存肺線維化を野生型マウスと比べ、症状の改善が見られるかを調べた。また、その分子機構の解明を目指した研究を進めている。具体的には、動物実験において、そのストレスタンパク質が線維化のどのステップを抑制しているのかを明らかした。肺線維化では、まず上皮傷害(細胞死)が起こり、次に炎症反応(好中球やマクロファージの浸潤など)、そして最終的に線維化が起こる。そこで上皮細胞死(TUNEL法)、肺胞洗浄液中での炎症性細胞数、ヒドロキシプロリン量(コラーゲン量)を調べ、ストレスタンパク質により抑制されている反応を同定した。現在、それぞれのステップが抑制されているメカニズムを検証している。例えば、あるストレスタンパク質が上皮細胞死を抑制している場合、Bcl-2ファミリータンパク質の発現や活性、ミトコンドリア活性、小胞体ストレス応答、オートファージー、カスパーゼ活性などを詳細に解析し、ストレスタンパク質が作用する反応(分子)を同定している。
2: おおむね順調に進展している
対象とするストレスタンパク質の同定を完了するなど、当初の予定通りに進んでいるため。
(1)各ストレスタンパク質誘導薬のスクリーニング既存薬ライブラリーから、同定した肺線維化を抑制するストレスタンパク質を誘導する(増やす)薬をスクリーニングする。まず、個々のストレスタンパク質遺伝子プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドを作成し、それを保持させた細胞を用いた系で一次スクリーニングを行い、イムノブロット法で二次スクリーニングを行う。毒性の少ない誘導薬を得たいので、三次スクリーニングではその既存薬の細胞毒性を調べ、細胞毒性を示さない濃度でストレスタンパク質の産生を誘導するものを選択する。四次スクリーニングではその既存薬をマウスに投与し、目的のストレスタンパク質の肺での産生を誘導するかを検討する。(2)同定したストレスタンパク質のDDS技術を用いた修飾SODの場合、リン脂質と共有結合させる(PC化する)ことにより血中安定性と組織親和性を向上させ臨床での治療効果を増強させることが出来た。そこで同定されたストレスタンパク質の中で可能なものはPC化修飾を行い評価の対象とする。
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