本研究は、高尿酸血症から慢性腎臓病(CKD)になる家族性若年性高尿酸血症性腎症(FJHN)のモデルマウスと、 CKD進行要因であるウロモジュリン排泄増加モデルマウスのどちらも尿酸トランスポーター Slc22a12 遺伝子発現が亢進し、アンドロゲン作用を増強する Srd5a2 遺伝子の発現が前者では亢 進、後者では不変であった研究結果を発展させ、2 つのモデルマウスの Slc22a12 発現亢進に対してアンドロゲン系とアンジオテンシン系阻害薬を用いた抑制効果について明らかにすることを目的としている。 今年度においては、C57BL/6J、B6-ChrXCMSMマウスにおいて、HPRT遺伝子をゲノムシークエンスにより、Hprt bアレルは低い活性のHPRT Bタンパクを発現するC57BL/6Jとは異なり、B6-ChrXCMSM はHprt aアレルは高い活性のHPRT Aタンパクを発現していると考えられた。C57BL/6JよりもHPRT活性が高いB6-ChrXCMSMは、赤血球中においてヒポキサンチンからイノシン一リン酸(IMP)への変換が亢進し、赤血球内のヒポキサンチン濃度がより低くなり、ヒポキサンチンの赤血球外への放出が少なくなることが予想された。ヒトと同様に尿酸分解酵素ウリカーゼの遺伝子を欠損したB6/Uox-KOにより血漿中尿酸濃度をヒトと同じレベルにすると、室温放置30分およびアロプリノール添加30分放置による血漿中ヒポキサンチン濃度の上昇が抑えられた。高濃度の血漿中尿酸により赤血球からのヒポキサンチン放出が抑制された可能性が考えられた。 今後は新規転写産物が尿酸トランスポーターとしての機能を持つかどうか検討する予定である。
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