研究課題/領域番号 |
26460111
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
大野 行弘 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (00432534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | てんかん / シナプス / シナプス小胞タンパク2A (SV2A) / 開口分泌 / 神経伝達物質 / GABA / キンドリング / グルタミン酸 |
研究実績の概要 |
SV2A遺伝子にミスセンス変異を導入したSv2aL174Qラットを用い、Sv2aL174Q変異がキンドリング形成およびシナプス分泌に及ぼす影響を解析し、SV2A-GABA系がてんかん原性の獲得に極めて重要な機能を有していることを見出した。主な結果を以下に示す。 ・キンドリング形成の感受性評価:扁桃核キンドリング実験を行い、Sv2aL174Q変異のキンドリング形成への影響を評価した。その結果、Sv2aL174Qラットでは対照動物に比べ、扁桃核キンドリングの形成が有意に加速され、けいれん発現の感受性が顕著に亢進することが確認された。 ・Sv2aL174Qラットにおけるシナプス分泌の解析:In vivo microdialysis法を用い、扁桃核におけるGABAおよびグルタミン酸のシナプス遊離を解析した。その結果、Sv2aL174Qラットでは対照動物に比べ、高カリウム(脱分極)刺激によるGABA遊離が有意に低下していた。一方、高カリウム刺激によるグルタミン酸遊離には変化は認められなかった。 ・Sv2aL174QラットにおけるSV2Aおよび開口分泌蛋白の発現解析:Sv2aL174Qラットの脳内SV2A発現レベルには変化は認められず、Sv2aL174Q変異がSV2A発現に影響しないことが確認された。一方、開口分泌を調節する蛋白質であるsynaptotagmin1、Munc18-1、NSF, SNAP-25の発現量を解析した結果、Sv2aL174Qラットではsynaptotagmin1の発現が特異的に低下していることが判明した。 ・Sv2aL174Qラットの脳切片を用いた電気生理研究:Sv2aL174Qラットの海馬におけるシナプス伝達を電気生理学的に解析した結果、CA1錐体細胞層におけるスパイク発射(集合電位)がSv2aL174Q変異により上昇していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたSv2aL174Qラットを用いた行動薬理学的、神経化学的研究をほぼ終了することができた。得られた結果は、てんかんの発症・進展(てんかん原性の獲得)におけるSV2A-GABA神経系の制御機構の機能意義とメカニズムを明確に示すものであり、今後これら研究成果の総括を行い、国内外に発表して行く予定である。一方、電気生理学的研究および初代培養系を用いた分子メカニズム研究は継続検討する。
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今後の研究の推進方策 |
Sv2aL174Qラットを用いた研究成果をとりまとめ、SV2Aのてんかん制御機構について国内外に発表して行く。さらに、以下の項目について検討を行う予定である。 ・SV2Aの発現解析(GABA神経局在性):蛍光免疫二重染色によりSV2Aの発現細胞種(特に、GABA神経への局在性)を評価する。 ・Sv2aL174Qラットにおけるけいれん発作原因部位の解析:神経興奮マーカーであるFos蛋白質の脳内発現マッピング解析を行い、Sv2aL174Qラットの脳興奮部位を同定する。 ・神経細胞初代培養系におけるSV2Aの発現解析:Sv2aL174Qラット新生児より調製した神経細胞を初代培養し、SV2Aの発現様式を細胞レベルで解析することにより、SV2Aの細胞膜への輸送(trafficking)機能、分布の変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用額の端数残金であり、来年度分に合わせて使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度使用額の端数残金であり、来年度分に合わせて使用する。
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