研究実績の概要 |
SV2A 変異ラット(Sv2aL174Qラット)を用いて、シナプス分泌調節タンパク質SV2Aのてんかん原性調節機能を探ってきた。その結果、SV2Aがキンドリング形成(てんかん原性)を抑制制御していること、さらに、SV2Aの調節機能メカニズムを解明することができた。主な成果は以下の通りである。1) Sv2aL174Q変異によりSV2A機能を障害すると、pentylenetetrazole (PTZ、GABA-A受容体拮抗薬)によるけいれん発現感受性が著しく亢進した。さらに、2) PTZキンドリング(全般発作)および扁桃核キンドリング(部分発作)の形成も顕著に促進され、SV2Aがてんかん原性を抑制制御していることが示された。Sv2aL174Q変異による病態変化としては、3)海馬および扁桃核におけるGABAのシナプス遊離が低下すること、4)開口分泌タンパク質のシナプトタグミン1発現が低下すること、さらに、5)グルタミン酸のシナプス遊離は影響を受けないことが明らかとなった。これらの結果は、SV2Aが大脳辺縁系においてGABAのシナプス遊離を特異的に制御しており、SV2A機能の低下・破綻によって、てんかんの発症・進展が促進されることを示すものであり、SV2A-GABA神経系の機能促進が新たなてんかん治療法に繋がることが示唆された。これらの研究成果は複数の国際的学術誌(Sci. Rep., 6, 27420, 2016; Front. Pharmacol., 7, 210, 2016など)に掲載するとともに、てんかん発症および治療におけるSV2Aの役割に関して総説(CNS Neurol Disord Drug Targets, 16, 463-471, 2017)を掲載した。また、国内および国際学会のシンポジウムにおいて、研究結果を発表した。
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