研究課題/領域番号 |
26460118
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉本 尚子 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10415333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 含硫黄薬理成分 / ディープトランスクリプトーム / 生合成 / ネギ属 / ツルバギア属 / ニンニクカズラ属 |
研究実績の概要 |
システインスルホキシド誘導体はネギ属やツルバギア属、ニンニクカズラ属等の植物が生産する含硫黄二次代謝物であり、植物組織の損傷に伴い酵素的および非酵素的な反応を経て多様な硫黄化合物群に変換される。こうして生じた硫黄化合物群や、システインスルホキシド誘導体やその生合成中間体は、発ガン抑制活性、免疫賦活作用、血小板凝集抑制活性、コレステロール低下作用等、重要な薬理活性を示す。本研究では、ディープトランスクリプトーム解析と硫黄代謝物プロファイル解析を統合したデータマイニングに基づいて、システインスルホキシド誘導体の生合成に関わる酵素や輸送体の同定を行う。平成26年度に行った内容は以下のとおりである。1.ネギ属植物ニンニクにおけるディープトランスクリプトーム解析と硫黄代謝物プロファイル解析、及びそれらの結果に基づく生合成関連遺伝子候補コンティグの探索を行った。現在、候補コンティグに対応する全長cDNAの単離を進めている。2.ニンニクにおけるシステインスルホキシド誘導体生合成に関わる脱グルタミル化酵素3種とS酸化酵素1種の機能解析を行った。脱グルタミル化酵素に関しては酵母組換え蛋白の酵素活性解析や細胞内局在解析の結果から、3種の酵素のシステインスルホキシド誘導体における機能分担が推定された(Yoshimoto et al., Front Plant Sci, 5:758(2015))。S酸化酵素についても酵素活性解析や細胞内及び組織局在解析の結果から生合成における機能が推測された(論文投稿準備中)。3.ツルバギア属植物Tulbaghia violacea及びニンニクカズラ属植物Mansoa alliaceaのディープトランスクリプトーム解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネギ属ニンニクに関しては、ディープトランスクリプトーム解析と硫黄代謝物プロファイル解析が済み、硫黄代謝物生合成の時間的・空間的な全体像についての知見が得られるとともに新規生合成候補遺伝子が明らかにされた。また脱グルタミル化酵素3種とS酸化酵素1種の機能が同定された。これらの研究に関しては、当初の計画よりも進展している。一方、ツルバギア属Tulbaghia violaceaとニンニクカズラ属Mansoa alliaceaについては、植物の入手と栽培条件の検討に時間を要したため、ディープトランスクリプトーム解析のraw dataを得たが、データ解析や硫黄代謝物プロファイル解析は遂行できていなく、計画よりもやや遅れている。以上を総合し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ネギ属ニンニクに関しては、平成26年度に引き続き、データ統合解析と生合成候補遺伝子の単離ならびに機能解析を進める。ツルバギア属Tulbaghia violaceaとニンニクカズラ属Mansoa alliaceaについては、平成26年度に行ったディープトランスクリプトームのデータ解析と硫黄代謝物プロファイル解析を行い、それらの統合解析に基づく生合成候補遺伝子の単離ならびに機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ツルバギア属Tulbaghia violaceaとニンニクカズラ属Mansoa alliaceaの入手と栽培条件検討に時間を要したため、平成26年度に行う予定であった硫黄代謝物プロファイル解析が遂行できず、解析のための試薬代や消耗品代が使用されずに残った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に遂行出来なかったツルバギア属Tulbaghia violaceaとニンニクカズラ属Mansoa alliaceaの硫黄代謝物プロファイル解析は、平成27年度の初期に行う。解析には長い時間はかからず、遅れは取り戻せる予定である。また、平成27年度には、計画調書で記載したとおり、生合成候補遺伝子の単離と機能解析も行う。
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