Panax属植物における成分的多様性の成因を解明する目的で、対照的なサポニン成分組成を有するPanax属植物3種について、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行い、サポニン生合成に関与する酵素遺伝子の探索及びその制御機構の分子基盤の解析を行う。RNA-Seq解析により得られた候補遺伝子配列を基に、Panax属植物における成分的多様性の形成の第一要因と考えられるアグリコン骨格生成酵素であるオキシドスクアレン環化酵素 (OSC)遺伝子9種類の全長配列を得た。そのうち5種類がダンマレンジオールII合成酵素遺伝子、4種類がbeta-アミリン合成酵素遺伝子であった。3種由来の両遺伝子の塩基配列は種内多型が認められたが、種間においてそれぞれ高い相同性を示した。これまでオレアナン系サポニンが報告されなかった三七人参にbeta-アミリン合成酵素遺伝子が少なくとも2種類存在していることがわかった。同じ環境条件で栽培しているPanax属植物3種の地下部のサポニン成分プロファイルをLC-ESI-LTQ/Orbitrap-MSを用いて詳細に比較した。MS<sup>n</sup>分析データにより異なるアグリコンを持つ93サポニン成分のデータベースを作成し、3種における93サポニン成分の分布を明らかにした。3種のサポニン成分プロファイルと照らし合わせて、根及び根茎で強く発現しているcytochrome P450 (CYP450) および糖転移酵素(GT)を検索したところ、それぞれ69遺伝子および50遺伝子が候補遺伝子として選別できた。また、LC-MSの結果から、三七人参の根に微量のオレアナン系サポニンが検出された。
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