研究課題/領域番号 |
26460120
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
数馬 恒平 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 客員助教 (70552446)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベニバナ色素 / 乱花 / べに餅 / LC-MS分析 / ケモメトリクス / 単離構造解析 |
研究実績の概要 |
ベニバナのサンプルを得るために、2015年7月に山形県西村山郡河北町を訪れて、河北べに花会の協力の下で伝統的加工法による加工品である乱花およびべに餅を調整した。特にベニバナ資料館の作業場が利用できたことで、新鮮花の煎じなど機材を用いる作業が効率的にできた。新鮮花はベニバナ畑で直接抽出し、作業場で発酵花、べに餅および乱花を調整し、その場で抽出できるものは行った。加えて、2015年1月には、口紅や染色に用いる泥状紅を伝統的製法で調整する京都の染物屋を訪れ、泥状紅の生産を体験し、得られた泥状紅を収集した。 これらを研究計画に基づき各種溶媒で抽出した。凍結乾燥により粉末状に抽出物を得る際、脱脂しない場合粉末化が困難だったため、結局ヘキサンおよび醋酸エチルで溶媒抽出して得られた水層を凍結乾燥して分析用サンプルとした。興味の対象であるベニバナ特有の色素類は水層に分配される。 調整したサンプルをLC-MS分析に供した。正および負イオンモードで高分解能MS測定およびMS/MS測定し、そのサンプルのプロファイルを大まかに掌握した。発酵花では、新鮮花と比べてサルフロールイエロウBの含有量が大きく減少しているほか、カーサミン含有量が増えていた。乱花では、未同定の黄色色素が多数検出された。C18カラム(逆層)の分離と比較して、Amideカラム(HILIC)の分離は黄色色素に関して十分とは言えなかったが、C18カラムでは分離しない成分を検出した。 LC-MSデータの多変量データ解析環境を実現するプラットフォームの選定には時間をかけた。結果的にMac OS X上でParallelsを介してWindows XP, 7, 8およびLinuxの作動を確認すると同時に、これらのOS上で、各種フリーソフト、市販のオミクス解析ソフトや統計解析ソフトが特に問題なく作動する事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルの収集は順調に進み、新鮮花の採集と直後の抽出、べに餅および乱花の加工花の調製ができたことは計画通りである。加えて、変化の過程を補完するために、べに餅の加工過程である発酵花を経時的に採集してその場で抽出した。これらのサンプルの抽出物の調製においては、試料の粉末化にやや難があったが、脂質を溶媒抽出することで解決した。抽出物のLC-MS解析では、C18カラムによる分離は良かったが、HILIC(アミドカラム)による分離には改善の余地がある。LC-MSデータの多変量解析に用いるコンピューターについては、事前の検討に時間をかけた。特に、統計解析ソフトのデモ版が適切に作動するかどうか、全体の使い勝手の良さを考慮し、システム構成を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は進捗状況および方向性に関して、それほど大きな無理や変更の必要性がないという印象であり、次年度も計画通り進めていく。若干の問題点として、加工品の対照である新鮮花を、富山産よりも山形産にした方がよい可能性もあるので、次年度に再度採集する。LC-MSの分離については、解析に極端に影響を及ぼすとは考えていないが、より良い分離条件を見つけるためアミド以外のHILICカラムによる分析も行う。多変量解析で差を見出すには、最初のサンプルの選び方が重要であり、今後問題点が出てきた場合には、サンプルを再度採集する際に考慮する。また、本研究も含めたベニバナの情報発信をホームページで行えるよう準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
富山大学の共通機器使用料支払いに関しては11月から3月分の使用料は次年度初頭に請求される。本研究における11月から3月の共通機器使用料が3月31日現在未執行である。同時に、共通機器利用料の一部が他の予算からも支払われており、本研究費による負担が軽減されたことも理由である。多変量データ解析に用いるコンピューターと統計解析ソフトウエアの選定に時間をかけたので、その分が未執行である。その他の理由としては、LC-MS関連の消耗品の在庫が充実しており当座は購入せずとも間に合ったことや、本研究に直接関係する学会発表を本年度は行わなかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度未使用分に関しては、次年度初頭に今年度共通機器使用料および、多変量解析に用いるコンピューターの購入費として執行される。一方、次年度は次年度分の予算があることも考慮し、物品費の余剰分の一部を多変量解析に使用するコンピューターのグレードを上げてデータ解析環境の拡充を図ることに使用する。具体的には、当初はWindowsの中堅クラスのサーバーを考えていたが、より柔軟に運用できるApple社製高性能サーバーに変更する。使用予定ソフトウエアの作動に関しては、現在所有のApple社製コンピューターにてデモ版を用いて確認済みである。
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