研究課題/領域番号 |
26460124
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 耕史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (00253469)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チューブリン制御分子 / 海洋無脊椎動物 / 海綿動物 / 海草 / AChE阻害活性阻害 / H5N1ウイルス増殖抑制 / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、新規抗がん剤開発のためのシード化合物の創製を目指した基礎研究として、1)がん細胞の分裂等の細胞機能に大きく関与しているチューブリン分子の重合・脱重合を阻害する化学物質を九州西岸海域産海洋無脊椎動物から探索し、2)その構造解明と構造活性相関の検討を行い、3)活性アナログ体開発のための基礎データとして、活性発現に必須な構造単位を解明することを目的として行う。具体的には、1)海洋無脊椎動物(軟サンゴ類、海綿動物類、棘皮動物類など)の抽出物について PC12 細胞に対する神経突起伸展作用を検討し、チューブリン機能に影響を与えている可能性を示す抽出物を選出し、突起伸展作用を指標にして活性成分を単離する。2)活性成分の作用点がチューブリン・微小管であることを確認するために、HT1080 細胞の細胞質微小管に対する影響を指標にした活性試験を行う。3)活性を示す成分の構造を解明する。4)構造活性相関の検討と活性発現に必須な構造単位を解明する。現在、長崎県沿岸産の海洋無脊椎動物の採集と抽出エキスの調整を行っている。また、紅海産海洋無脊椎動物の抽出物の成分研究も開始した。海綿動物 Mycale euplectellioides からはヒト乳がん細胞に対して増殖抑制作用並びにアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性を示す、セラミド成分を得ることができた。また、海草 Thalassodendron ciliatum から、新型インフルエンザウイルス(H5N1)に対する抗ウイルス活性を示す、ジアシルグリセライドを単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりに、海洋無脊椎動物、特に、平成26年度は、棘皮動物ナマコ類を採集し、処理して粗抽出物を作成し、高極性脂質画分並びに低極性脂質画分等を調製し、それぞれの画分について、一次スクリーニングを行い、活性を示す画分を見出すことができた。現在、当初の計画どおり、それぞれの画分の活性成分を、各種カラムクロマトグラフィーを行い、分離・精製中である。
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今後の研究の推進方策 |
活性成分のチューブリン重合・脱重合作用の検討と精密構造解析を以下の手順で行う。 1)単離した活性成分の作用点がチューブリン/微小管であることを確認するために、第二次活性試験として、ヒト線維肉腫細胞HT1080の細胞質微小管に対する作用を、抗チューブ リン抗体を用いた免疫染色法で解析し、高感度かつ高い特異性をもってチューブリン重合・脱重合への作用を確認する。 2)チューブリン重合・脱重合作用を示すことが認められた成分について、各種機器スペクトル (NMR、MS、IR、UV スペクトル) データならびに化学的手法を用いて、化学構造の解明を行う。 3)構造の明らかになった活性成分について、さらに詳細(定量的)にチューブリン重合 ・脱重合への作用を調べる。特に、チューブリンの重合/脱重合に影響を及ぼすことが知られているcolchicine、vinblastine、vincristine や taxolを Positive Controlとして用い、活性強度を比較し、Control 物質より顕著な活性を示す成分の検索に努める。
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