研究課題/領域番号 |
26460125
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田中 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (90171769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エラジタンニン / 代謝 / ポリフェノール / Carpinus / Quercus / Camellia |
研究実績の概要 |
本研究は、機能性ポリフェノールとして注目されるエラジタンニンの代謝を、化学的手法を駆使して動的に理解することを目的にしている。 エラジタンニンはヘキサハイドロキシジフェノイル(HHDP)基を持つことを特徴としており、その生合成はこれまで化学的および生物学的証拠が無いままにガロイル基の酸化的カップリングで生成すると説明されてきた。ところが本研究で我々はクマシデ葉のエラジタンニンでは一旦酸化段階の高いデヒドロヘキサハイドロキシジフェノイル(DHHDP)基が生成し、それの非酵素的還元的によってHHDP基が生成していることを明らかにした。さらに同様の現象が他の植物でも起こっていることを確認している。現在、反応機構を検討中であるが、本研究で全く新しいエラジタンニン生合成機構が提唱できると考えている。これと関連して、ガロイル基の酸化的カップリングによりDHHDP基を得る反応についても検討しているが、現時点ではガロイル基の酸化的開裂反応がカップリングに優先してしまうことが分かった。これについては現在さらに検討を行っている。 また、同じくブナ科植物から新規の骨格を持つエラジタンニンを分離し構造決定を決定したが、そこでは通常の分光学的手法では分からない立体化学を計算化学的手法の適用により明らかにした。また、同様に極めて重要な既知エラジタンニンの立体化学についても同様の手法で訂正している。また、同じ植物でも新芽の主エラジタンニンが硬葉で減少していることを発見し、主成分が酸化的に代謝されていることを化学的に明らかにしている。 ツバキの葉においても同様に枝先の新芽の主成分であるエラジタンニンが成長に伴い劇的に減少することを発見し、その代謝を現在検討中である。酸化的代謝によるという仮説のもとエラジタンニンの酵素酸化を検討して、HHDP基の新しい酸化反応を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も重要な目的であるエラジタンニンのHHDP基がDHHDP基の非酵素的還元により生成することを繰り返し確認しており、当初予定していたクマシデだけでなく、アカシデや他の科の植物でも類似の反応が起こっていることを明らかにした。 反応のメカニズムについてはまだ未解明の部分もあるが、反応条件の違いにより生成物が変わることなどの知見を得ている。カテキンでも関連する反応を見出しており、カテキンで起こる反応との関連性についても明らかになっている。 また、ブナ科植物やツバキについても非常に興味深いエラジタンニンの代謝が起こっていることを発見し、新規骨格を持つエラジタンニンを従来の機器分析による手法に加えて計算化学的手法を駆使して決定した。エラジタンニン以外の代謝産物との結合についても明らかにしている。今後さらにそれらについて詳細な化学的研究を行うことで、エラジタンニン代謝についての新しい知見が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
エラジタンニンのHHDP基がDHHDP基の非酵素的還元により生成することを明らかにしたが、現時点ではすべてのエラジタンニン含有植物で同様の還元的代謝を確認できているわけではない。他の植物での代謝についても詳細に検討していく。 還元が起これば何かが酸化されているはずであり、それについて現在検討を行っている。今後、ガロイル基からDHHDP基を合成する反応の検討に加えて、化学的手法によるインビトロでのエラジタンニン代謝の再現を検討することで、還元反応のメカニズムを理解する。それらの結果がそろい次第論文化する。 さらに、ブナ科およびツバキ葉におけるエラジタンニンの代謝についてもデータの蓄積が出来ているが、反応メカニズムについてさらに詳細に検討して論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表旅費の事務処理ミスによるもの
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究消耗品費(試薬及びガラス器具)として使用する
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