数種類のエラジタンニン含有植物について、葉の成長に伴う成分組成の変化を観察し、デヒドロヘキサハイドロキシジフェノイル(DHHDP)基からヘキサハイドロキシジフェノイル(HHDP)基への還元的代謝が起こっていることを確認した。DHHDP基を持つエラジタンニンを純粋分離し、各種スペクトル解析をもとにその構造を確認するとともに、さまざまな条件下で還元反応の詳細な メカニズムの解析を行った。還元反応は自発的・非酵素的に進行することから酸化還元不均化反応であると考えられ、還元生成物はほぼ想定通り50%の収率で生成していることを確認した。しかしながら同時に生成しているはずの酸化生成物の組成は極めて複雑で、現時点で同定できておらず、現在も検討を継続中である。研究の過程で酸化還元不均化反応を起こしやすいDHHDP基と極めて安定なDHHDP基が存在することも判明した。その反応性の違いが配座の違いによるものと推定されることから現在計算化学的手法で検討している。 一方、ツバキやアラカシでは葉の成長に伴いエラジタンニンが減少するが、そのメカニズムは酵素による酸化的代謝によるものと推定し、モデル酸化実験での反応解析と実際に代謝産物を植物から離することで、酸化的代謝メカニズムを推定した。現在、高分子化反応、あるいは植物組織との共有結合による不溶化が起こっていると考え、これについても検討を行っている。 エラジタンニンの酸化はカテキン酸化と密接に関連することをこれまで明らかにしており、カテキン類の酸化メカニズムの解析についても研究を継続している。DHHDP基と同じ部分構造を持つカテキン酸化的二量化形成反応での高い立体選択性が生じる理由や、不安定二量体の分解で生成する物質の同定を行って学会発表した。
|