研究課題
研究代表者はこれまでに、防己黄耆湯およびその主たる構成生薬の防已について、中枢性の痛みと神経障害性疼痛に及ぼす効果について検討し、方剤および防已に含まれる非麻薬性モルヒナンアルカロイドのシノメニンには、それぞれの痛みに対して効果があることを明らかにすることができた。さらに、その作用機序にはモルヒネが結合するオピオイド受容体を介さないことが、ナロキソンなどのオピオイドアンタゴニストを用いる実験で明らかにすることができた。昨年度は、その研究成果をまとめて投稿し、論文化するこに成功した。さらに、研究代表者らは、シノメニンおよび防己黄耆湯の詳細な作用機序を明らかにする目的で、坐骨神経結紮モデルにおける生体内炎症誘発物質である腫瘍壊死因子αの寄与とシノメニンおよび防己黄耆湯の作用をそれぞれ検討した。坐骨神経結紮における血中の腫瘍壊死因子濃度を測定したが、上昇傾向が認めらるものの、個体間のバラつきが大きく、発痛への明白な関与は明らかにできていない。しかし、防己黄耆湯やシノメニンを投与したマウスでは、腫瘍壊死因子αやインターロイキン-1βの産生が抑制される傾向が認められた。このことから、防己黄耆湯やシノメニンは、腫瘍壊死因子αをはじめとする炎症性物質の産生を制御することによる間接的な機序を介して鎮痛活性を示す可能性が推測された。目下、マウス個々における数値のバラつきを少なくするために、マウスの個体数を多くして実験するとともに、再現性や抗炎症作用の寄与がどの程度あるのかを、腫瘍壊死因子αに対する抗体等を用いて検討する。有意性が認められる結果が出た時点で学会発表を行うとともに、成果を論文にまとめる。
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Pharmacometrics
巻: 92 ページ: 83-89
http://www.nichiyaku.ac.jp/teacher/kanpou_takano.html