研究課題
初年度は、標的酵素である3種類のセリン-アセチル転移酵素(SAT1-3)および2種類のシステイン合成酵素(CS1とCS3)を阻害する微生物培養液を網羅的にスクリーニングした。土壌または植物由来の放線菌、糸状菌の培養液約6,000サンプルをスクリーニングし、酵素阻害活性を示すサンプル約300サンプルを見出すことができた。この中から、CS1とCS3の両方を阻害するPF1057B(またはその位置異性体PF1057D)とpencolideをそれぞれ異なる糸状菌培養液から単離した。また上述の酵素阻害活性評価系に加え、赤痢アメーバ原虫に対する活性評価系を新たに構築した。赤痢アメーバの生育にはシステインが必須であるため、システイン欠乏培地中でシステイン生合成経路が阻害されると赤痢アメーバは生育できない。これを利用し、システイン欠乏培地と高濃度添加培地での生育を比較することにより、生育培地へ添加した化合物や微生物培養液がシステイン生合成経路を阻害することで抗赤痢アメーバ活性を発現するのかを調べる系である。保有する天然化合物ライブラリーから抗赤痢アメーバ原虫活性を示す化合物を探索したところ、既知の抗原虫活性化合物に加え、新たに複数の化合物に抗赤痢アメーバ原虫活性を見出すことができた。そのうち数化合物は培地中のシステインの有無による差が見られた。これらについてはシステイン生合成経路阻害活性を調べ、阻害機構を解析してゆく予定である。また微生物培養液から得られた酵素阻害活性化合物からは、pencolideにシステイン生合成阻害依存的な抗赤痢アメーバ活性が認められた。
2: おおむね順調に進展している
微生物培養液のスクリーニングは、供給されたサンプルの数が少なかったために、予定(10,000サンプル)よりも少ないサンプル数(6,000サンプル)しか行うことができなかった。また、微生物培養液から単離できたシステイン合成酵素阻害化合物の数も少なかった。しかし、赤痢アメーバ原虫を用いるアッセイ系を構築したことにより、直接的に赤痢アメーバに活性を示す化合物を探索できるようになった。酵素アッセイと組み合わせることにより、微生物培養液から単離したpencolideに、システイン合成酵素阻害活性に依存した抗赤痢アメーバ原虫活性を見出すことができた。さらには原虫を用いるアッセイ系で、微生物培養液のスクリーニングも新たに開始することができた。3種類存在する赤痢アメーバのシステイン合成酵素(CS1、CS2、CS3)のうち、CS1特異的な阻害活性を示したexophillic acidについて、共結晶構造解析のための大量精製を行うことができた。
当初の予定通り、酵素阻害活性を指標としたスクリーニングを継続する。継続にあたり、セリン-アセチル転移酵素(SAT)の阻害活性評価法の見直しを行う予定である。現在、SAT阻害活性の評価は、SAT反応生成物であるO-アセチルセリンをシステイン合成酵素(CS)でシステインに変換し検出しているため、SATとCS共に阻害する化合物と、CSのみを阻害する化合物を区別することができない。そのため、SAT反応生成物であるO-アセチルセリンを直接的に検出する方法を構築してスクリーニングを行いたいと考えている。初年度に構築した赤痢アメーバ原虫を用いるアッセイ系でも、微生物培養液から抗赤痢アメーバ活性を示すサンプルをスクリーニングする。この系で、赤痢アメーバ原虫の生育を強力に阻害する化合物を単離してゆく。微生物培養液から見出したCS阻害活性化合物の酵素との共結晶解析をインドのGourinath先生のグループと共同で進めてゆく。
予定していた学会が当該年度に行われなかったため、旅費を使い切ることができなかった。
次年度に学会が開催される見込みであるため、学会に出席・発表するために使用する。
すべて 2015 その他
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Frontiers in Microbiology
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