研究課題
二年目にあたる平成27年度は、赤痢アメーバの2種類のシステイン合成酵素(CS1, CS3)を阻害する微生物培養液をスクリーニングした。土壌あるいは植物から単離した放線菌、糸状菌の培養液約2,700サンプルをスクリーニングし、各酵素を阻害するサンプルをそれぞれ約40-50サンプル、両酵素を阻害するサンプルを約30サンプル見出した。酵素阻害活性を示した一糸状菌を選択し、活性物質を単離したところ、Aspergillus属糸状菌が生産するpolyketide化合物xanthomegninに弱い酵素阻害活性を見出した。CS1およびCS3に対する50%阻害濃度は400-500 microMであった。微生物培養液に加え、所属機関保有の天然化合物ライブラリーに新たに追加された160化合物のシステイン合成酵素阻害活性を調べ、新たに8化合物に酵素阻害活性を見出した。初年度に構築した抗赤痢アメーバ原虫活性評価系を用いて、システイン生合成経路を阻害することにより抗赤痢アメーバ活性を示す物質と、システイン生合成経路阻害とは関係なく抗赤痢アメーバ活性を示す物質をそれぞれ微生物培養液より探索した。放線菌および糸状菌培養液約6,900サンプルをスクリーニングした結果、システイン生合成経路を阻害することで抗赤痢アメーバ活性を示すものを11サンプル見出した。これら活性を示した微生物培養液中からは、初年度に見出した活性物質pencolideが検出された。システイン生合成とは無関係に抗赤痢アメーバ活性を示す微生物培養液は31サンプル選択でき、活性物質として、ovalicinを単離した。
2: おおむね順調に進展している
酵素阻害活性物質に加え、より直接的に抗赤痢アメーバ活性を示す物質を、赤痢アメーバ原虫を用いたアッセイ系により見出すことができた。平成27年度は酵素阻害活性を指標としたスクリーニングに供した微生物培養液サンプル数が少なかったが、それを補うスクリーニングを赤痢アメーバ原虫を用いた系で行うことができた。その結果見出した化合物の活性を動物試験で検証する予定となっている。
赤痢アメーバのシステイン生合成経路を担うもう一つの酵素であるセリンーアセチル転移酵素の酵素阻害活性を評価する新たな系の構築を行い、スクリーニングを開始する。平成27年度開始できなかった阻害物質と酵素の共結晶構造解析を行う。単離した抗赤痢アメーバ物質について、共同研究先である国立感染症研究所でin vivo試験を行う。結果により、標的タンパク質の同定を行う。抗赤痢アメーバ活性物質のスクリーニングを継続し、新たな化合物を単離する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Frontiers in Microbiology
巻: 6 ページ: article 962
10.3389/fmicb.2015.00962
http://www.kitasato-u.ac.jp/lisci/labo/BioFuncWeb/Index.html