研究課題/領域番号 |
26460130
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木内 文之 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60161402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フラボノイド / 抗炎症作用 / COX-2 / 遺伝子発現 / baicalein / wogonin / oroxylin A / iNOS |
研究実績の概要 |
1)フラボノイド混合物のCOX-2並びにiNOSへの作用の解析 オウゴンの主要フラボノイドであるbaicalein並びに比較的含量が多いwogoninとoroxylin A について,培養細胞を用いて,単独並びに混合物のLPS刺激によるCOX-2遺伝子の発現過程に対する影響を調べた.LPS誘導性PGE2の産生にはNF-kBシグナル伝達経路の活性化が必須との報告があることから,J774.1細胞を用いてNF-kBの核内への移行に対する影響を調べた結果,baicaleinに強い抑制が見られた.また,RAW264.7細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイで,NF-kBによる転写活性を調べた結果,wogoninに強い抑制が見られた.しかし,いずれの過程についてもフラボノイドの混合による明らかな活性に上昇は見られず,COX-2のmRNA発現量は,wogoninが強く抑制した.一方,iNOSのmRNAの発現量に対する影響を調べた結果,baicaleinとwogoninがCOX-2の遺伝子の発現に影響を与えない程度の低濃度でiNOS遺伝子の発現を抑制するとともに,baicaleinとwogoninの混合によって作用が増強されることが明らかとなった.以上の結果から,フラボノイド混合物によるLPS刺激によるPGE2産生抑制作用の増強は,COX-2への直接阻害,NF-kBの核内への移行,NF-kBによる転写の3つの過程を3種の異なるフラボノイドが阻害することによる共同的な作用であり,更にbaicaleinとwogoninによるiNOSの産生抑制もCOX-2遺伝子の発現に抑制的に働いているものと考えられた. 2)フラボノイドの混合比が活性に与える影響の評価 3種のフラボノイド混合物による活性の上昇が,個々のフラボノイドが主として異なる過程に作用しているためであることがわかったため,等量混合物のみの活性を比較した. 3)フラボノイド誘導体の合成 6-methoxywogoninの量的確保が困難なため,その合成のためのアセトフェノン原料の合成を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種のフラボノイドを混合することにより作用が増強されるメカニズムとして,これらのフラボノイドが,LPS刺激によって誘発されPGE2産生に至る一連の過程のなかで,各々異なる過程を阻害することにより,その効果が相乗的に現れてPGE2産生の阻害活性の増強として現れていることが明らかになった.また,これらのフラボノイドは,iNOSの産生抑制にも協同的に働くことが明らかになり,iNOSへの影響がさらにPGE2産生に影響している可能性も考えられた.微量フラボノイドである6-methoxywogoninの確保ができておらず,フラボノイドの各種組合せに関する解析は進んでいないが,オウゴン中の含量が多い3種のフラボノイドに関する解析が進展しており,最終年度に向けての進展が期待できる状況である.
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今後の研究の推進方策 |
3種のフラボノイドが,LPS刺激によるPGE2産生の異なる過程に作用することにより,阻害活性の増強が見られていることが明らかになったが,これらのフラボノイドはiNOSの産生量も低下させ,iNOSの低下が更にPGE2産生の抑制に働いている可能性が考えられた.このように,フラボノイド混合物のPGE2産生抑制には,様々な過程が複雑に絡み合っていることが考えられたため,量的な確保ができているbaicalein, wogonin, oroxylin Aの3種のフラボノイドを用いて,単独並びにその混合物のLPS刺激による各種遺伝子の発現に対する影響を,網羅的に解析することが必要と考えた.そこで,オウゴンの抽出物中の濃度比に対応した濃度の3種のフラボノイド単独とこれらの混合物について,遺伝子チップを用いた網羅的な遺伝子発現量解析を外注しており,その結果を用いた解析を進める.
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