• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

海洋生物由来菌類の産生する抗がん剤のシーズの探索及びリード化合物の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26460136
研究機関大阪薬科大学

研究代表者

山田 剛司  大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (20278592)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード海洋生物 / 真菌 / 細胞毒性物質 / tandyukisins / altercrasin A
研究実績の概要

昨年度の研究実績により見出された6種の細胞毒性物質産生菌について、活性本体およびその類縁化合物を探索することを目的とし、引き続き大量培養を行った。このうちワカメ表面から分離した真菌Stereum sp.の代謝物から新規物質を1種単離した。本化合物は、培養がん細胞に対し、強い細胞増殖阻害活性が認められた。また、低分子であることからリード化合物の創製や合成研究の分野により発展が見込まれるため、特許を取得すべく、現在申請準備中である。現在、類縁体の探索のため、本菌代謝産物の精査を行っている。残る5種のうち、3種については、菌代謝物の活性本体が既知物質と判明し、培養の継続を見合わせている。本年度後半からウメボシイソギンチャク及びダイダイイソカイメン由来真菌の代謝物について、それぞれ検討しているが、細胞毒性を有する活性本体の単離には至ってない。
以前からの継代培養菌においては、クロイソカイメンから分離した真菌Aspergillus fumigatusより3種の新規物質tandyukisins B-Dを単離し、論文により報告した。これらは各種スペクトル解析及び化学反応を行い、それぞれの絶対構造を決定した。さらにこれらに対し、39種ヒト培養がん細胞パネル試験を行ったが、有意な細胞毒性または選択性は認められなかった。
同じく、継代培養菌であるムラサキウニから分離した真菌Alternaria sp. より1種の新規細胞毒性物質altercrasin Aを単離し、論文報告した。実績としては、その難解な立体構造を各種スペクトルの解析及び精密な化学反応をおこなうことにより確定したところにある。全合成でのみ立体構造をあきらかにできる類似化合物にとって、今後立体配置を検討する上で非常に有意義な手法を確立できたと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度の研究計画に基づいた研究により見出された6種の細胞毒性物質産生菌のうち1種から新規細胞毒性物質の単離し、構造を決定することができた。本年度の研究計画通り継代培養により本化合物の補充は達成できている。
既存の細胞毒性物質産生菌の代謝物の精査については、クロイソカイメンから分離した真菌Aspergillus fumigatus及びムラサキウニから分離した真菌Alternaria sp.の菌代謝物から新規化合物あるいは有用な化合物を単離し、有意義な立体構造決定法も含めた内容の論文を発表できた。さらに論文発表にはまだ至っていないが、海水魚ボラより分離した真菌A. fumigatusの代謝産物において、CDスペクトルを用いた効率的な絶対構造決定法が確立されつつある。
また、以上の研究の進行度によって次年度研究計画である、これまで得られた化合物をシードとしてリード化合物を創製するための足掛かりもでき、現在進行中である。

今後の研究の推進方策

現在、4種の有用な生理活性物質産生菌及び2種の生理活性物質探索過程の菌を有している。引き続きこれらの代謝物を検討し、新規細胞毒性物質の単離及びその化学構造の決定を第一の目標とする。また、得られた生理活性物質のファーマコフォアを明らかにした後、新たな機能性リード化合物の開発を目指す一環として、それらをシーズに種々の化学的修飾を行い、細胞増殖阻害活性を中心に生理活性の多様性を検討する。
天然化合物の作用発現機構の解明においても立体化学を明らかにすることは非常に重要である。しかし、NMRスペクトルで立体に関する情報が十分に得られない、X線構造解析に適した単結晶が得られない、また、全合成は困難であるなど絶対構造の決定は決して安易ではない。一方、多くの立体異性体を得ることができれば、NMRスペクトルの化学シフトの比較、CDスペクトルにおける曲線(Cotton 効果)の規則性など経験的に立体化学に関する情報を得ることができる。現在、立体構造の決定が困難な化合物について、綿密な代謝物の分離・精製によって立体異性体を収集している。今後、これらのCDスペクトルにおけるCotton 効果と不斉中心の絶対配置の関係を明らかにし、簡便で非破壊的に貴重な天然化合物の立体構造決定法を確立していく。

次年度使用額が生じた理由

菌代謝物の分離・精製に関する消耗品が見込まれる上、立体構造の解析研究で実施する誘導化反応及びリード化合物創製における化学修飾で試薬が必要となるため、それに備えた。

次年度使用額の使用計画

分離・精製において、Shephadex LH-20及びシリカゲルなどのカラム充填剤並びにHPLCにおけるセミ分取用パックドカラムに高い予算をとっており、次いで反応試薬及び培養消耗品(人工海水、培地成分)の購入に予算を設けた計画となっている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Altercrasin A, a novel decalin derivative with spirotetramic acid, produced by a sea urchin-derived Alternaria sp.2015

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Yamada, Takashi Kikuchi, Reiko Tanaka
    • 雑誌名

      Tetrahedron Letter

      巻: 56 ページ: 1229-1232

    • DOI

      10.1016/j.tetlet.2015.01.066

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Determination of the chemical Structures of tandyukisins B–D, isolated from a marine sponge-derived fungus2015

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Yamada, Yoshihide Umebayashi, Maiko Kawashima, Yuma Sugiura, Takashi Kikuchi, Reiko Tanaka
    • 雑誌名

      Marine Drugs

      巻: 13 ページ: 3231-3240

    • DOI

      doi:10.3390/md13053231

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] カイメン由来真菌の産生する新規細胞毒性物質の絶対構造2016

    • 著者名/発表者名
      山田 剛司,鈴江 真世,杉浦 右真,菊地 崇,田中 麗子
    • 学会等名
      日本薬学会 第136年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-03-27 – 2019-03-29
  • [学会発表] ムラサキウニ由来真菌の新規代謝産物altercrasin類の構造2016

    • 著者名/発表者名
      田中 亜純,西井 拓巳,菊地 崇,田中 麗子,山田 剛司
    • 学会等名
      日本薬学会 第136年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-03-27 – 2016-03-29

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi