研究実績の概要 |
2014年、大阪府泉南郡岬町沿岸において採集した海洋生物及び流木から数種の細胞毒性物質産生菌を分離した。このうち、ワカメ表面から細胞毒性物質産生菌として分離した真菌の代謝物から昨年度1種の新規物質を離した。本化合物は、構造の新規性及び強い細胞増殖阻害活性を有しており、機能性分子になりうる期待がもてるため、本年度特許出願に至った(特願2016-086493)。また、低分子であることからリード化合物の開発の一環として、本品の誘導体を検討するため、効率的な補充方法を検討した。その結果、種々の期間で培養した本菌の代謝物をLC-MSで検定したところ、培養期間3週間で最も多くの目的物質を産生することを見出した。その他、ウメボシイソギンチャク由来真菌(未同定)の代謝物からは、強い細胞毒性を有する新規ポリフェノール類を単離し、その構造を明らかにした。目下、その絶対立体構造を検討中である。 以前からの継代培養菌においては、クロイソカイメンから分離した真菌より2種の新規物質tandyukisins E~Fを単離し、論文により2016年報告した。このうちtandyukisin Eに有意な細胞毒性が認められ、現在分子プロファイリング支援活動において、がんの分子標的を中心とした活性試験を検討中である。さらに本菌の代謝物から新たに2種の新規ジテルペンを単離し、それらの絶対構造を決定した。次に、海水魚ボラより分離した真菌の代謝産物から得られた既知物質pseurotins A, A1及びA2は互いにジアステレオマーである。これらについて化学反応とCDスペクトルを用いて絶対構造の検討を行った。構造中の不斉中心とCD Cotton効果の関係を明らかとし、その結果、論文で報告されているpseurotins A2の構造に誤りがあることを発見し、訂正論文を投稿した。
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