研究課題/領域番号 |
26460138
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
奥 尚枝 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (90281518)
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研究分担者 |
石黒 京子 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70151363) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗かゆみ / 天然資源 / ストレス / アッセイ法 / 病態モデル / マウス |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎などの重篤なかゆみの治療薬の開発を目的に、漢方で難治性かゆみの一因とされるオ血(おけつ:古い血の滞り)と、かゆみの増悪化因子として知られているストレスの併発による難治性の痒みモデルとアッセイ法の構築、さらにその応用によるかゆみの増悪・難治化メカニズムの解明および天然資源からの抑制物質の探索を試みた。 ①かゆみモデルとアッセイ法の構築:H26年度確立したオ血+ストレスの病態モデルにおけるストレス負荷時間の更なる短縮化を検討したが、ノーマル群と病態モデル群での引っ掻き動作(=かゆみ回避動作)回数に有意な差が観られなかった。従って、以後は、H26年度確立条件で実験を行うこととした。 ②増悪・難治化メカニズムの解明と新しい治療標的因子の探索:2週間毎に3回かゆみ実験を繰り返したところ、約1-2%の割合でかゆみ刺激に鋭敏および鈍感なマウスが存在することが明らかとなった。現在、統計学的処理可能な匹数のマウスの選別を継続中である。一方、両特徴のマウスを用いたプロテ-ム解析用の試料調製について、先の腸、肥満細胞に次いで胸腺および脾臓について条件の検討を行い、可溶性タンパク質画分を得ることができた。 ③抑制物質の探索:H26年度に引き続き、一過性かゆみモデルにおいて抑制活性を示した数種の植物エキスについて本法で評価したが、いずれも有意な効果が見られず、本モデルでは通常とは異なる起痒メカニズムが生じているという先の考察を支持する結果となった。一方、抗不安薬ジアゼパムを本法に適用したところ、マウスの自発運動のみを有意に抑制し、かゆみへの有意な効果は示さなかったことから、ストレス性のかゆみ増悪には抗ストレス薬だけでは奏功しないことも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に不可欠な病態モデルの確立については、利便性や動物愛護の最大限の配慮から、最も短時間で作成できる条件が確立できた。一方、難治化にかかわる因子の探索のためのプロテオーム解析においては、昨年度の問題点として残っていた肥満細胞からのタンパク質調製に関しては、対象組織を同様に免疫に関連する脾臓および胸腺に変更することで解決したものの、それらの対応に時間を要したことから本年度末までに実際のプロテオーム解析には到らなかった。また、本モデルの難治性かゆみを有意に抑制する天然資源とその活性物質の探索に関してもスクリーニングを継続中であるものの、現時点で有効な植物エキスを見いだせずにいることから、それに続く活性物質の探索には未着手であり、当初の計画よりやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
プロテオーム解析による難治化にかかわる因子の探索精度をあげるためには統計学的処理を可能にする数のマウスが不可欠であることから、引き続きかゆみ試験を繰り返し行い、かゆみ刺激に敏感および鈍感な特徴を有するマウス(約1-2%の割合で存在)を選別する。また、これと平行してプロテオーム解析の準備を行う。すなわち、胸腺および脾臓から得られた可溶性タンパク質画分の二次元電気泳動による分離を行い、ターゲットのタンパク質スポットの特定、その抽出およびLC-MS/MSによる同定を行う。さらに、本法でのかゆみを抑制する天然資源の調査および評価を行い、見い出した植物エキスについては活性成分の単離と構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初プロテーム解析を行う予定の組織からのタンパク質調製が困難を極めたことから、その条件検討に時間を要したこと、また、その解決策として対象組織を変更したことによる新たなタンパク質調製条件の検討を行ったことから、その先の二次元電気泳動で用いる高価な蛍光標識試薬(使用期限が短い)の購入分を次年度に繰り越した。さらに二次元電気泳動に引き続き行うLC-MS/MSの外部業者への測定依頼(高額)も順次、次年度に行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
二次元電気泳動で用いる高価な蛍光標識試薬(使用期限が短い)の購入および、その後のLC-MS/MSの外部業者への測定依頼費に充てる。
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