研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎などの激しく難治性の痒みの抑制物質を天然資源から探索することを目的に、難治性の痒み患者に生じる痒み過敏 (itchy skin)を反映する病態モデルの確立による増悪・難治化メカニズムの解析と抑制物質の探索を試みた。 ① 病態モデルとアッセイ法の確立:痒みの悪化要因であるストレスおよび漢方で様々な疾患の一因とされるオ血(おけつ:古い血の滞り)との併発によるモデルの構築を目的に、先のストレス負荷法に引き続き、本年度はオ血の誘導およびアレルギー性痒み誘導に用いる試薬濃度を検討・改変した。その結果、再現性良く, itchy skinでのオ血とストレスを併発した難治性痒みモデルとin vivoアッセイ法を確立した。現在、本法に代表的なオ血薬, 抗ストレス薬を適用することで難治化-オ血-ストレスとの関連を解析中である。 ② 治療標的分子の探索:痒み試験の繰り返しにより、アレルギー性の痒み刺激に対し激しく回避反応(引っ掻き動作)を起こす「痒みに敏感なマウス」と、反対に「鈍感なマウス」をそれぞれ選別し、両マウスの肥満細胞における機能性タンパク質の差異を検討した。前年に引き続き、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システムによる網羅的解析を行うための摘出法や精製条件の検討・改変を順次試みたが困難であったため、最終的にショットガン解析法で解析した。その結果、「敏感」および「鈍感」なマウスの肥満細胞に特徴的に存在するタンパク質分子を各20種以上同定することに成功した。これらは難治性痒みの新たな治療標的因子となる可能性が示唆されることから詳細を検討中である。 ③ 活性物質の探索:上記① および先に確立したアッセイ法を用いて、シーズとなる植物のスクリーニングを行った結果、先に駆オ血作用を明らかにした金銀花がアレルギー性の痒みを抑制することを見出し、抗痒み物質の単離を継続中である。
|