研究課題
α-グルコシダーゼ阻害活性を示すトレスタチンおよびアミロスタチンは、それぞれ土壌放線菌Streptomyces dimorphogenesisおよびS. conglobatusから産生されるC7Nアミノサイクリトール化合物である。この類縁化合物であるアカルボースは、α-グルコシダーゼ阻害活性を示し、現在、2型糖尿病治療薬として上市されている。このことから、トレスタチンおよびアミロスタチンの構造を化学的に変換できれば、新たな糖尿病薬ができると期待されている。トレスタチンおよびアミロスタチン生産菌の染色体DNAから遺伝子ライブラリーを構築した。また、ゲノムシーケンサーを用いてドラフト配列を取得し、両化合物の生合成に関わる遺伝子クラスターを特定した。さらに、この配列を元に作製してPCRスクリーニングを行うことにより、遺伝子ライブラリから目的のクローンを獲得することに成功した。これら生合成遺伝子を解析したところ、アミノサイクリトール部分(C7N部分)を生合成する2-epi-5-epi-valiolone合成酵素や糖部分を繋ぐグルコシルトランスフェラーゼなどが含まれていることを明らかにした。現在、これら酵素群が生合成に関わることを目的に、遺伝子破壊株の作製を試みている。また、これら破壊株や改変株を利用することにより新たなアミノサイクリトール類縁体の創生に挑戦している。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に示した計画の進捗状況は概ね順調であると考えている。1)トレスタチンおよびアミロスタチン生産菌をゲノムシーケンサーで解析し、ドラフト配列を得た。この遺伝子配列を基にホモロジー検索を行ったところ、これら化合物の生合成酵素遺伝子群を特定することができた。2)遺伝子破壊株を作製する目的で、ノックアウトベクターの作製を完了し、コンジュゲーションによる破壊株の調製を試みているところである。
トレスタチンおよびアミロスタチンの生合成酵素遺伝子の破壊株を調製し、取得した破壊株から新たな類縁化合物の生産を試みる予定である。さらに、生合成遺伝子クラスターに存在する酵素について、タンパク質発現を行い、酵素反応や結晶構造など機能の特定を検討している。
平成27年1月1日で徳島文理大学薬学部から富山大学和漢医薬学総合研究所に異動し、当初購入予定の物品が既に本施設に存在したため、使用額に差が生じた。
平成27年度は、異動によるセットアップもほぼ完了し、繰り越した額を含めて計画通りに助成金を使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 10件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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