研究実績の概要 |
イカリソウより単離したプレニルフラボノイドのうち、サンプル量が確保できた 35個について、抗モノクローナルCML, CMA 抗体を用いたELISA 法により、CML, CMA生成阻害活性を測定した。その結果、阻害活性の強い化合物は、配糖体よりもアグリコンであった。また、アグリコンの中でもC 環 3 位に酸素官能基を有するフラボノール骨格より、3 位に酸素官能基が無いフラバン骨格で活性が強いことが判明した。即ち、EK-B (8), epimedonin E (21), G (22), H (24) の4種のプレニルフラボノイドに顕著なCML, CMA 生成阻害活性が観察された。 生成阻害活性の強い4種の化合物は、共通してカテコール基とプレニル基を有しているため、それらの官能基の重要性を検討した。先ず、EK-B のフェノール性水酸基をジアゾメタンでメチル化した。その結果、メチル化誘導体はEK-B より活性が低下したが、特にフラボノイド骨格 A 環 5 位の水酸基がメチル化された化合物は活性が顕著に低下した。このことから、 A 環 5 位の水酸基とC 環4位のカルボニル基との水素結合がCML, CMA 生成阻害活性に重要であることが示唆された。また、カテコール基を持つ単純な3つの化合物(gallic acid, pyrogallol, chlorogenic acid)とEK-BについてCML, CMA生成阻害活性を比較した。その結果、3 つの化合物ともにEK-Bより弱い阻害活性を示すのみであった。次に、プレニル基の重要性を検討するために、プロポリス由来のartepillin C, drupanin, baccharin を用いてCML, CMA 生成阻害活性を検討した。しかしながら、どの化合物にもCML, CMA生成阻害活性は確認できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
Luteolinをリード化合物として、各種プレニルフラボノイド誘導体を効率的に合成:市販されているLuteolinを原料として、Luteolinの芳香環の水素原子8位と5’位にイソプレン単位の異なる官能基(ジメチルアリル基、ゲラニル基、ファルネシル基)を付加させ、プレニル基のバラエティーを組み合わせたプレニル化フラボノイドの合成法を検討する。先ず、プレニル基の導入には、Qinggang Mei らの icariin の全合成を参考に、para-Claisen Cope rearrangement 法を用いて行う(Beilstein J. Org. Chem. 2015, 11, 1220-1225)。 AGEs生成抑制活性の評価:得られた化合物のAGEs生成抑制活性試験は、モノクローナル抗CML抗体、抗CMA抗体を用いたELISA法で行う。ポジティブコントロールとして、LuteolinとEpimedokoreanin Bを用いる。そして、プレニル化の影響について詳細な構造活性相関の検討を行い、更なる誘導体の合成に活用する。
|