研究課題/領域番号 |
26460142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山次 健三 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30646807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞内反応 / タンパク質化学修飾 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、低分子阻害剤に代表される既存のタンパク質機能制御法が抱える問題点を克服するため、新しいタンパク質機能制御法として、細胞内触媒的化学修飾(アシル化)による標的タンパク質の細胞内局在制御とそれによる機能制御を実現することを目的とする。平成27年度は、触媒的アシル化されたタンパク質の機能制御とその評価を行なうことを計画した。 ジヒドロ葉酸レダクダーゼ(eDHFR)をモデルタンパク質として設定して検討を行った。まず修飾タンパク質の機能評価を定量的に行なうため、見出した触媒によるタンパク質アシル化の反応位置と修飾効率(収率)の決定を行なった。具体的には消化酵素による処理とLC-MS/MSを組み合わせた評価法を確立し、触媒結合部位近傍に存在するリジン残基選択的に70%程度の収率でアシル化反応が進行していることを明らかとした。 次に触媒的脂肪酸修飾によるタンパク質の細胞膜成分への局在能の変化を評価した。評価はリポソームー緩衝液分配実験により行なった。前年度までに触媒的脂肪酸修飾により修飾タンパク質が膜画分に移行することに関する初期的知見を得ていたが、平成27年度は脂肪酸の最適化により、昨年度に用いていた脂肪酸よりも2倍以上効率的に膜画分へと移行させる脂肪酸修飾を見出すことが出来た。 さらに開発した触媒系を生細胞へと適用するための検討を行った。触媒が培地中で不安定であることを見出し、触媒に含まれるチオール基をジスルフィド結合で保護することにより触媒の安定化に成功した。さらに保護触媒は細胞内還元剤であるグルタチオンによって脱保護され、活性触媒を放出することも確認出来た。 現在、細胞内脂肪酸修飾反応の実現に向けて検討を行っているが、問題点は確実に抽出されて来ており、次年度における実現に向けて基盤となる結果が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、タンパク質の触媒的化学修飾により膜画分への移行能を獲得させることが出来たため。また細胞内触媒反応の実現に向けて触媒の改変が進んでおり、実現に向けた問題の抽出が行なえているため。
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今後の研究の推進方策 |
非細胞系における選択的化学修飾とそれによる膜成分への移行制御を達成できたため、平成28年度は細胞内反応の実現に注力する。まずは抗体によって評価が簡便にできるアセチル化反応で触媒および反応条件の最適化を行ない、次に脂肪酸修飾およびその他の修飾へと展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までは触媒開発及び非細胞系のアッセイが主であり、細胞系のアッセイと比較して物品費が安価なため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に注力して行なう細胞実験は試薬および設備維持費等が高額なため、細胞実験の速やかな推進のために翌年度分と合わせて重点的に用いる。
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